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片方の親だけの「傾聴・共感」スキルアップだけでも子どもは救われる【「不登校」「ひきこもり」を考える】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月18日 9時26分

【「不登校」「ひきこもり」を考える】#19

 両親揃って「傾聴・共感」の実践ができれば理想ですが、現実には、わが国では父親は「オレは仕事が忙しい。子育ては母親の仕事なんだからお前がやれ」などと母親に押し付けるケースがいまだに少なくありません。それでも、たとえば母親(または父親)だけが傾聴・共感のスキルを高めるだけでも、多くのお子さんは救われるという印象を私は持っています。

 一方で、長年傷つけられてきた子どもの中には、簡単には親を信用できないケースが少なくありません。もともと不登校やひきこもりになるのは敏感で賢い子どもですから、少しでも親の変化を感じると、その後はその本気度を試すため、故意に過激な言動を通じた「試し行動」を一時的に取る場合があります。

 夫婦関係でも、たとえば妻がただ話を聞いてもらいたいと思っていても、夫がろくに聞きもしないで知ったようなアドバイスをしてきて、「ごちゃごちゃ言わずに聞いてくれるだけでいいのに」と不快感を覚え、「もう夫なんかにグチるのはやめた」と奥さま仲間でグチり合って気を晴らしているという方は多いのではないでしょうか? それがある日、その夫に「今日から傾聴・共感するから自分にグチってほしい」と言われたところで、そんな気にはとてもなれない……というのと同じような構図が、今度は親子で繰り返されていると言えば理解できるでしょうか?

■理不尽な言葉も黙って聞き、背後にある本音を知る努力を

 でも、夫婦は自分で選んだ相手ですからその責任は自分にあるし、究極は別れるという選択肢もありますが、子は親を選べない上に、特に小さいうちは親は生殺与奪を握る絶対的存在ですから、その影響力たるや計り知れません。逆に言えば、それだけ存在感の大きな親が、ひたすらわが子の心に寄り添い、ただただわが子の話に耳を傾け、ときにわが子から反論したくなるような理不尽な言葉が発せられても黙って聞き、その言葉の背後にある本音を知ろうと努めてくれることは、お子さんにとっては本当に大きな力となるのです。

 「子どもと話なんていつもしている」「これ以上、何を聞けと言うのか」などと途中であきらめてはいけません。何カ月何年かかろうと丁寧に続けていくことで、徐々に子どもからの信頼感が得られると、「こんなことを考えて、今までこの子は生きてきたのか」「本当にかわいそうで申し訳ないことをしてしまっていた」と驚かされることの連続だと、傾聴・共感を続けてこられた多くの親御さんが口にするほど、素の感情がどんどん出てきます。

 ここまでくると、問題の多かった言動も劇的になくなってきます。そうすることで子どもが親に心から受け入れてもらえたと感じられた時、何歳になっても「いい子(の演じ上手)」は「本当に自立した子」へと変われるのです。(つづく)

▽最上悠(もがみ・ゆう) 精神科医、医学博士。うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

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