「あの」はサブカル枠にとどまらず独特の違和感で番組の空気を変える“切り札”的存在(高倉文紀)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月10日 9時26分
あの(C)日刊ゲンダイ
【次世代バラエティー女王はキミだ!】
ソロアーティストとしても活躍中で2023年のNHK「紅白歌合戦」に初出場した、「あのちゃん」こと、あの。
9月4日生まれ(生年非公表)。2013~19年にアイドルグループ「ゆるめるモ!」のメンバーとして活動。2021年に「ラヴィット!」(TBS系)にゲスト出演して突拍子もない発言を繰り返してスタジオをざわつかせるも、実は芸人たちに発言を遠隔操作されていたという「水曜日のダウンタウン」のドッキリ企画で、知名度が急上昇。
昨年からライフカードやブックオフのCMに起用されたほか、「全力!脱力タイムズ」「呼び出し先生タナカ」(ともにフジテレビ系)などのバラエティー番組で活躍を見せている。
キュートなビジュアルも魅力的。日本マクドナルドとコラボしたオリジナル曲「スマイルあげない」を歌ったCMでは、マッククルー風コスチュームがハマっていて、コスプレとしても完成度が高かった。
“ボク”の一人称で舌足らずに話す彼女の独特の存在感は、起きているときに見た夢の中で出会った人のような浮遊感がある。
小田急線・登戸駅前の空き地に、閉園になった向ケ丘遊園が近くにあったことにちなんでメリーゴーラウンドを運んで設置するという「非日常のにぎわい」をテーマにしたイベントに遭遇したことがあるが、ライトアップされた回転木馬が回る幻想的な姿を見ていて、あのちゃんの世界観が頭に浮かんできた。
彼女は、テレビの世界にボディーブローをきかせて、「非日常」を持ち込む存在だ。
親しみやすいタレントが人気を集め、コンプライアンスもあってなかなかバラエティー番組に大胆な非日常空間をつくるのが難しくなっている中で、ユニークで不思議な彼女は、すてきな違和感として番組の空気を変える切り札となっている。
初期にはサブカルチャー好きな人たちの間で支持され、カルチャー雑誌「クイック・ジャパン」で特集が組まれた。だが、彼女はサブカル系の枠にとどまらず、もっと広い世界に飛び出した。サブカルのイメージで“消費”されることなく、コアな支持に限定されない人気者になったという点では、ももいろクローバーZに通じるものがある。
あのは、タイムマシンに乗って令和にやって来たかのような女の子だ。未来から来たかもしれないし、ひょっとすると過去から来たのかもしれない……と思わせる新しさと懐かしさの両方を秘めているからこそ、幅広い年代で人気を集めているのだろう。
(高倉文紀/美少女・女優評論家)
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