河村たかし名古屋市長のトンデモ発言は浅薄な頭にネトウヨ思想を流し込んだだけ(ラサール石井)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月25日 9時26分
河村たかし名古屋市長(C)日刊ゲンダイ
【ラサール石井 東憤西笑】#201
「あの戦争は何だったのか」「東京裁判は何だったのか」「天皇の戦争責任は」、それらを問う芝居「夢の泪」(井上ひさし作)を上演中であるが、トンデモ発言が飛び出した。
またまた河村名古屋市長である。
5月14日、名古屋城が戦火で燃えた日であることから、この日を「なごや平和の日」と決めたという会見で、普通なら戦争を否定し平和を祈念するメッセージを発するところを、「(戦争で)死んでいった人たちに思いを寄せないといけない」と述べ(ここまではいい)、「祖国のために命を捨てるのは高度な道徳的行為だ」と発言したのだ。
その後の記者の質問に答えて「国に命を捧げるのは大変勇気のあること。『サンキューベリーマッチ』と言わなきゃ、みんなの福祉も平和も保てないんじゃないんですか」とも言っている。
あの戦争で死んだ日本人は兵士230万人、外地の一般邦人死者数約30万人、内地での戦災死亡者約50万人、合わせて約310万人となっている。
兵士の多くは補給路を断たれた末の餓死。民間人はずるずると降伏を遅らせ、空襲や原爆で死んだ。これがお国のために戦ったと言えるのか。これは「見殺し」である。殺したのは敵ではなく、味方の日本ではないか。こんな死を憂えることはあっても賛美してはならない。
「夢の泪」のセリフ。「政府は8月7日の時点で、すべての役所のすべての文書を焼却するよう指示した」
証拠隠滅である。「ということは、その時はもう負けると決めていた。だったら早く降伏すれば、長崎には原爆は落ちなかったのに」
だいたい、「サンキューベリーマッチ」とはなんと軽い言い方か、そもそも300万人が死んだ段階で、福祉も平和も保たれていないではないか。
■教養というものが感じられない
他人の金メダルをかじり、トリエンナーレの大村知事リコールの投票偽造事件に肩入れした。この人にはおおよそ教養というものが感じられない。浅薄な頭にネトウヨ思想を流し込んだだけだ。名古屋の人たちは本当にこれでいいのか。考えた方がいいのではないか。
さらに「残念ながら戦争というものは起こるから」と言い放った。適当なこと言うな。再び井上ひさし氏のセリフ。「戦争は自然現象ではない。一から十まで人間の行為である」
国のために人があるのではない。人のために国があるのだ。為政者は戦争を起こさない努力を誓うべきではないのか。それでこそ「なごや平和の日」だろう。
(ラサール石井/タレント)
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