ヒトゲノムの43%を占める「動く遺伝子」と老化との関係【長寿研究のいまを知る】#16
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月9日 9時26分
ヒトは大きな環境変化に順応しながら命を永らえてきた(C)日刊ゲンダイ
【長寿研究のいまを知る】#16
地球は10万年~2万年のスケールで氷期と間氷期を繰り返している。ヒトはそうした大きな環境変化に順応しながら命を永らえてきたが、なぜそのようなことができたのか?
その理由のひとつとして「動く遺伝子(転移遺伝子)」の存在があるからと言われている。
動く遺伝子とはかつてはジャンク遺伝子と呼ばれ、ゴミのような扱いを受けてきた遺伝子のこと。その後の研究で、ダイナミックな環境の変化に順応するため、遺伝子の一角の塩基配列を丸ごと変え、ゲノム構造を変化させることがわかった。それはまるで遺伝子が動いているかのように見えることから「トランスポゾン」と呼ばれている。
ちなみにヒトの遺伝子は、DNAが全体の2%程度で、動く遺伝子が43%。残りはその残骸、未解明なものと言われている。
トランスポゾンの話を進めるにあたって、改めてゲノム、染色体、遺伝子、DNAの関係についておさらいをしておきたい。
そもそもヒトはおよそ60兆個(37兆個との説もある)の細胞でできている。細胞ひとつひとつには細胞核があり、その中に遺伝情報が刻まれたDNA(デオキシリボ核酸)が入っている。DNAは2重らせん構造をしたひも状の物質で、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類の塩基が並んでいる。ヒトは細胞内に60億塩基対のDNAを持っているが、この塩基の並び方の一部でも変わると病気になることがある。
DNAは細胞内でヒストンと呼ばれる棒状のタンパク質に巻き付いた複合体(ヌクレオーソム)を作っている。それが巻き取られたのがクロマチンで、規則正しく折りたためたものを染色体と呼ぶ。ヌクレオーソムにおけるヒストンはアセチル化(アセチル基が付与されること)を受けると、ヌクレオーソムが緩んで転写が活発する。
DNAが遺伝情報として働くためには、一部がRNAに転写されてさらにタンパク質に「翻訳」されなければならない。翻訳とはDNAの並びをタンパク質を作るアミノ酸の並びに変換することを言う。DNA上でタンパク質に翻訳される領域が遺伝子(DNAの2~5%程度)で、ヒトはおよそ2万個の遺伝子があるとされる。
一部の例外を除いて1人の体の細胞はすべて同じDNAを持つが、細胞の種類によって転写・翻訳される遺伝子の組み合わせが異なることで、肝臓で肝細胞になったり、神経細胞になったりする。
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