ヒトゲノムの43%を占める「動く遺伝子」と老化との関係【長寿研究のいまを知る】#16
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月9日 9時26分
ただし、遺伝子領域はすべてタンパク質に翻訳されるわけではない。翻訳される部分をエクソンといい、翻訳されない部分をイントロンという。転写されるときは、まず未成熟のメッセンジャーRNA(mRNA)として全体が転写され、その後、スプライシングと呼ばれる仕組みにより、イントロンが切り離されてエクソン同士がつなぎあわされ、成熟mRNAとなる。その後、ようやくタンパク質へ翻訳されるのだ。
動く遺伝子であるトランスポゾンの数や割合は生物ごとに異なり、数%~80%とばらつきがある。普段は眠っているこの遺伝子は、活性化することでDNAの塩基配列を変えるため、突然変異の原因となり、生物進化を促すものと考えられている。
トランスポゾンは特定のDNAの断片を切り出し、別の場所に再挿入することで移動する。DNAトランスポゾンとレトロトランスポゾンに大別され、前者は自身のDNA配列を切り出して別のゲノムDNA配列に挿入する、カット&ペースト式で移動する。後者は、自身の配列をRNAに一度転写してからDNAを作り、それをゲノムの別の場所に挿入するコピー&ペースト方式で移動する。ただし、多くの哺乳類はDNAトランスポゾンの機能を失っていることがわかっている。
ヒトのレトロトランスポゾンが活性化することで環境の大きな変化に順応する一方で、DNAの損傷につながり、病気を発症するケースがあることもわかっている。現在、その数は血友病、先天性の疾患、がんなど120種類を越えると報告されている。
では、レトロトランスポゾンは老化とどのような関りがあるのか。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師がいう。
「老化細胞は炎症性サイトカインやケモカイン、細胞外マトリックス分解酵素などを分泌するSASPによって周囲の組織に慢性炎症を誘導し、加齢性疾患を引き起こすがことがわかっています。老化細胞内の分子の動きは前期と後期とで変わり、老化初期ではレトロトランスポゾンから産生されたメッセンジャーRNAのレベルは低いため、SASPには影響を及ぼしません。しかし、老化後期になるとレトロトランスポゾンDNAが増加するため、これがインターフェロンαやインターフェロンβをコードするIFN遺伝子群の転写につながり、これらのインターフェロンタンパク質がSASPに関与します」(つづく)
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