東メコン地域に次世代航空管制システムの導入支援ーJICAカンボジア事務所
Global News Asia / 2016年2月25日 10時0分
2016年2月19日、JICAカンボジア事務所が発行する「カンボジアだよりNo54」に、『新技術を導入、安全で経済的に「空の道」のインフラ整備、大きな成果』と題する記事が掲載された。
(記事)年々増えるフライトの数。カンボジアの空は、日々、忙しさを増しています。道路も標識もない「空の道」をどのように安全に、効率的に移動するか。その基本となる航空管制 のシステムが今、世界的に大きく変わろうとしています。
新しい航空管制は「次世代航空管制システム」と呼ばれ、国際民間航空機関(ICAO) が2025年までに世界の空に導入したいとしています。これまでの地上電波ではなく、人工衛星を使って飛行機の位置を把握するもので、ジグザグだった航路がまっすぐになって運航管理の精度が上がるだけでなく、燃料節約などにも貢献するものです。
東南アジアを含む世界の多くの空ですでに導入が始まっている次世代システムですが、カンボジア、ラオス、ベトナムの「東メコン地域」は、移行準備が圧倒的に遅れています。ちょうど、東南アジアの真ん中に位置する航路上重要な空域に、ぽっかりと次世代システムの穴が開いてしまっているのです。
JICAは2011年1月から、東メコン地域への次世代システム導入に向けた能力開発の技術協力プロジェクトを開始しました。ユニークなのは、1カ国ごとの事業ではなく、3カ国同時にプロジェクトが進んだことです。日本の長期専門家4人が、ベトナムを拠点に3カ国を巡回して研修や実習を重ねました。
プロジェクト終了を間近に控えた2015年12月、プノンペンで、その終了式も兼ねた「飛行経路設計装置(PANADES)」の引き渡し式が開かれました。カンボジア側からはソク・アン副首相、日本側は隈丸優次・駐カンボジア日本大使、安達一JICAカンボジア事務所所長に加え、チーフアドバイザーの原野京太郎さん、アドバイザーの原晋司さんらが出席しました。
引き渡し式では、5年間、協力総額約5億円に及ぶプロジェクトのカンボジアでの成果として、(1)、プノンペン、シェムリアップに到着するすべての飛行機の1機当たりの飛行時間が平均1.7分短縮、合計すると年間約110万ドルの燃料費節約、二酸化炭素排出量年間5,900トンの削減、(2)、延べ309人の航空関係者への研修・訓練の実施――などが挙げられました。 原野さんは「3カ国の中でカンボジアは最も熱心に取り組んでおり、想定した以上の成果が出た」と評価します。
カンボジアでは、閣僚でもあるプロジェクトチームのトップ自らが研修に参加して新飛行方式を学ぶなどリーダーシップが発揮されたことも成果が上がった要因といいます。原野さんは「カンボジアは今や、東南アジアでタイに次ぐ能力を有している。これからも技術を高めていくことを期待している」と話しています。カンボジアの空の玄関口であるプノンペンとシェムリアップの空港は2015年1月から11月までで、約580万人の乗降客が利用、前年同期比で13%増えました。2020年にはこの数が900万人を超えるだろうと見込まれています。わたしたちの命を守るのみならず、様々な効果がある新しい管制システムの発揮に期待したいと思います。
【編集 : 高橋大地】
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