日本人からすると“奇妙な表現”…英語圏で「He has been dead for two years.(彼は2年間ずっと死んでいる)」が当たり前に使われるワケ【カリスマ講師・関正生氏が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月5日 7時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
英語で「彼が亡くなって2年間が経つ」という旨を表現するときは、過去形もしくは現在完了形が使われます。過去形だと「He died two years ago.(彼は2年前に亡くなった)」ですが、現在完了形では「He has been dead for two years.(彼は2年間ずっと死んでいる)」となり、日本語的には奇妙な文章に感じられます。なぜここで現在完了形が使われるのでしょうか? 関正生氏の著書『カラー改訂版 世界一わかりやすい英文法の授業』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、解説します。
現在完了形の決まり文句
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「Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.」
─ Albert Einstein ─
「失敗したことがないという人は新しいことに挑戦したことがない人なんだ。」
─アルベルト・アインシュタイン─
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アインシュタイン(1879~1955)のコトバで現在完了形の復習から始めましょう。
現在完了形は「過去から現在までの矢印」のイメージで考えればOKです。
過去からいままでずっと「ミスしない」、「挑戦しない」ってイメージです。neverがあれば「経験」を表すって習ったかもしれませんが、あえて少しだけ「継続」も意識して「いままでミスしたことがなかった人は、いままでず~っとず~っと新しいことにトライしてこなかった人なんだよ」と考えれば、すごく雰囲気が出ますよ。
現在完了形を使った「和訳すると変な日本語になる」文章
大学入試でよく出る、現在完了形の書き換え問題です。
◆He died two years ago.= He has been dead( )two years.
答えはforです。
◆He【has been dead】for two years.「2年間【ずっと死んでいる】」
でもこの英文、変な和訳になっちゃいますね。現在完了形が使われていますから、イメージで考えていきましょう(図表)。
◆He died two years ago.「2年前に亡くなった」
この訳はよくわかります。でも、
◆He【has been dead】for two years.「2年間【ずっと死んでいる】」
この日本語、おかしいですよね? 「ずっと死んでる」だなんて、そんな発想しませんよね?
でも問題集では「書き換えパターン」と言って説明は一切ないのです。では、なぜ英語にはこんな表現があるのか説明します。
現在完了形から見えてくる「文化の違い」
日本と欧米では、死生観が違うんです。
欧米人の多くは、聖書の考えにしたがってsoul(魂)は永遠に不滅で、それがbody(肉体)の中に宿っている。soulとbodyは別々のものって考えがあります。
soulはいずれheaven(天国)に行くのが理想で、bodyは細胞の寿命をむかえるとtomb(お墓)に埋葬されるわけですよね。
(*魂は死なないからこそ、死後の世界を真剣に信じ、天国へ行くためにお祈りをするんです。海外のサッカー選手がゴールを決めたとき、お祈りしている姿を見たことありますよね。日本人Jリーガーはお祈りしてませんね。)
He has been dead for two years.には「bodyの【寿命が切れた(dead)】状態が、【2年間ずっと継続(has been ~ for two years)】している」という発想があるんです。
それを直訳すると、「2年間ずっと死んでいる」なんてヘンテコな和訳になりますが、そもそも日本人はそんな発想をしないので、どうしてもおかしな和訳になるんです。
これ、海外のホラー映画見てると納得できるんです。
悪魔が、【寿命の切れた(dead)】、【肉体(body)】に、悪い【魂(soul)】を吹きこめば【ゾンビ(zombie)】になりますよね。寿命の切れた肉体(body)ってどこにありますか?
墓地ですよね。地面の中。だからゾンビって地面の中から出てくるんです。【いままで何年間もずっと死んでた(has been dead for years)】んだけど、ゾンビとして復活したってことです。
(*ついでに言うと、悪魔は悪~い魂のストックをいっぱい持ってるんだと思います。「悪魔に魂を売る(sell one’s soul to the devil)」ってコトバがあるくらいですからね。悪魔は魂だけ持ってても何もできないから、その悪い魂を死体(body)に吹きこむんです。)
このように、日本人と欧米人で宗教が違う→死生観が違う。だからそれをコトバにしたものも違うという理屈なんです。
「文法を学ぶこと」=「文化を学ぶこと」
このように死生観が違うから、脳死や臓器移植に対する考え方も大きく違ってくるんです。
欧米諸国と比べて、日本は臓器移植にすごく厳しい。欧米のsoul とbody が切り離されているって考え方が日本にはないからでは? とボクは思います。欧米人は「bodyはあくまでbodyであって、臓器が変わってもsoulは何も変わらない」という意識が日本人よりはるかに強いのではないでしょうか? 代理出産に対しても同じ考えでしょうね。
さらに、キリスト教が弾圧されたとき、多くのキリスト教徒が宗教を捨てるより、処刑される(肉体を捨てる)ことを選んだのも、魂が永遠に不滅だという考えによるものだと思います。
きちんと文法を学ぶことは文化を学ぶことであり、思考様式の違いが実感できるとっても大きなチャンスでもあるんです。
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<まとめ>
●死生観の違いが英文にも表れる!
●ムリヤリ和訳から考えない!!
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関 正生
スタディサプリ講師
1975年東京生まれ。埼玉県立浦和高校、慶應義塾大学文学部(英米文学専攻)卒業。TOEIC L&Rテスト990点満点取得。リクルート運営のオンライン予備校「スタディサプリ」講師。スタディサプリでの有料受講者数は年間140万人以上。
著書は「世界一わかりやすい授業」シリーズ、「大学入試 関正生のプラチナルール」シリーズ(以上、KADOKAWA)など累計350万部突破。またNHKラジオ「基礎英語2」テキストでのコラム連載、英語雑誌『CNN ENGLISH EXPRESS』での記事執筆など多数。
オンライン英会話スクールhanaso(株式会社アンフープ)での教材監修、社会人向けの講演など、20年以上のキャリアで磨かれた「教えるプロ」として、英語を学習する全世代に強力な影響を与えている。
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