日本でも「共同親権」導入へ…国会への改正法案提出見込み、早ければ2025年施行も
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月3日 14時0分
(※画像はイメージです/PIXTA)
世田谷用賀法律事務所、水谷江利弁護士が話題のニュースを解説する本連載。今回は、日本でもいよいよ導入が見込まれている「共同親権」について解説していきます。
共同親権「要綱案」概要について
法制審議会家族法制部会第37回会議(令和6年1月30日開催)において、ついに「家族法制の見直しに関する要綱案」が取りまとめられました。政府は要綱案を基に今国会に法案を提出する見通しです。
法務省の「家族法制の見直しに関する要綱案」、こちらのとおりになれば、ついに共同親権が導入されることになります。要綱案によると、父母が離婚をするときはその一方を親権者と定めなければならないことを定める民法第819条が見直され、「協議離婚」においても「裁判離婚」においても「その双方又は一方を親権者と定める」ものとされることになりました。原則として共同とする、というよりも「共同としても単独としてもよい」ということです。
共同親権とするかどちらかの単独親権とするかについて、その協議が整わないときは家庭裁判所が「協議に代わる審判」をするものとされます。裁判所が、共同親権を認めず一方を親権者とするべき場合を、
① 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
② 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき
この2つの場合としています。つまり、片方の親が「子」か「配偶者」のいずれかにDVやモラルハラスメントとなる言動をしていた場合、ということでしょう。そして、共同親権とする場合でも、どちらかを主たる監護者とはせずに、「子の監護の分掌」を定めるべきとされました。
すでに成立した離婚については、どうなるのか
では、過去に単独の親権を定めて成立した離婚は、親権の見直しができるのでしょうか。
法律の適用は「不遡及」(過去には遡らない)が一応の原則です。法務省とは一線を画する、民間の法制審議会家族法制部会部会長・北村晴男弁護士は、かねて「この法律の施行前、離婚に伴い親権を喪失した父母は、親権を回復できる旨を規定すべき」として法律の「遡及(的)適用」を主張していましたが、これは今回の要綱案からは外れています。つまり、過去に成立した離婚について救済する方針は、今回の要綱案には記載されませんでした。過去の見直しをすれば裁判所がパンクするからということなのでしょうか。
共同親権の導入はいつごろ予定されているのか
弊所のご依頼者様、ご相談者様も、親権がどちらかに定めるのであれば、「共同親権の法制度が整備されるのを待ってみたい」と、法改正の動きを注視しながら離婚協議に当たっていらっしゃる方がいらっしゃいます。
では、実際の施行はいつになるでしょうか。民法の一部改正(債権法改正)は、平成27年3月末日付で要綱案が国会に提出され、平成29年5月に可決、同年に公布され、平成32年4月に施行になっています。相続法改正は、平成30年2月に法制審議会の要綱が採択され、国会に提出されると、同年7月には法案が可決し、平成31年7月以降順次施行されています。「債権法改正」は要綱案の国会提出から5年でしたが、相続法改正は実に翌年に施行されています。債権法改正に時間がかかったのは、その間に衆院解散があったなどの事情もあったようです。債権法改正、相続法改正にかかった時間を考えると、最短では本国会での可決、来年の施行もありうる、ということになります。
実際の手続きはどうなるのか?
今回は、面会交流について試行的面会を家庭裁判所が主体的に指導する規定も置かれる方向です。本来、迅速であるべき子どもとの面会の審理が、場合により年単位がかかる実務も見直される方向となりました。
ただ、今でさえ要領オーバーの家庭裁判所がこれに持ちこたえるのか。実務家としては、「共同親権か単独親権かについて揉めたときにどうやって決めるか」について、その審理方法(家事事件手続法)の方にも注目しています。
今回の要綱案では家事事件手続法の改正については詳しくは触れられていません。要綱案と併せて発出された「付帯決議」では「家族法制の見直しに関する要綱案に沿って民法等の改正がされた際は、家庭裁判所がこれまで以上に大きな役割を果たすことが見込まれるところであり、父母の別居や離婚に伴う子の養育をめぐる事件の審理に当たっては、改正後の民法等の規定の趣旨を踏まえた上で、子の利益を確保する観点から適切な審理が行われることが期待される。」とされています。
具体的な審理のシステムについても、十分な議論がなされたうえで見直しがされ、そしてそれに見合ったマンパワーが整備されることを強く望みます。
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