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不動産がある、離婚歴がある、子どもがいない…よく起きる「相続トラブル事例」9選【税理士が原因と予防策を解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月5日 9時15分

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※画像はイメージです/PIXTA

相続には、トラブルになりやすいパターンがあります。どのような場合にトラブルになるのか、その原因と対策を知っておくことは、トラブル回避の第一歩になります。みていきましょう。

「不動産を所有している場合」のトラブル事例

相続トラブルの多くは「不動産」が関係してきます。不動産は現預金と違ってすぐに分けたり譲渡したりすることが難しく、また実際の居住状況や共有の有無等によっても様々なトラブルが発生します。この章では不動産に関係した相続トラブル事例について解説します。

ケース1:不動産が自宅1つしかない

家族構成:父、長男、次男

父の資産状況:自宅(時価3,000万円)、預貯金1,000万円

その他:長男が、母亡き後も父と同居している

【発生した相続トラブル】

父の相続後に長男と次男で遺産分割協議を行う際に、次男が法定相続分である50%を主張。父と同居し今後も居住を継続していきたい長男は50%ではなく、預貯金1,000万円だけにしてほしいと主張するが次男は受け入れず相続トラブルに発展。

【原因】

不動産が自宅一つしかなく金融資産が少ない場合には、どうしても自宅を相続する相続人の相続割合が多くなり他の相続人に不平等な内容になってしまいます。自宅が相続発生後に空き家になるのであれば、売却して換金したお金を分けることもできますが、相続人が居住しているケースでは売却も難しく、相続トラブルに発展しがちです。

【予防策】

父が生前に、自宅を長男に、預貯金を次男に相続させるという内容の遺言を残しておけば、長男が困ることはありません。また次男の遺留分(法律上最低限認められている権利)も法定相続分である1/2の半分の1/4となりますので、総財産4,000万円の1/4で1,000万円となり次男としても長男に自宅分の権利を主張できなくなります。これにより長男は自宅を相続でき居住を継続していくことが可能となります。

ケース2:財産の大半が不動産

家族構成:父、母、長男、長女、次女

父の資産状況:自宅(時価5,000万円)、賃貸マンション一棟(時価1億円)、駐車場(時価4,000万円)、預貯金(500万円)

その他:賃貸マンションは満室で収益性がよく、駐車場は4割ほど空いている

【発生した相続トラブル】

複数ある不動産の中から相続人それぞれが賃料収入がある賃貸マンションの相続を希望したため、遺産分割がまとまらずトラブルに発展。

【原因】

財産の大半が不動産である場合には、どの不動産を相続するかによって時価や賃料収入等で不公平感が出やすくなってしまうことが主な原因です。また不動産は現預金と違い分割が難しく、共有状態にしたとしても後々に権利関係でトラブルになりやすい財産です。

【予防策】

複数の不動産を相続人に公平に相続させることが難しい場合には、売却や組み替えを行い同じような資産価値の不動産を所有する状態に整理するとよいでしょう。このケースの場合には賃貸マンションの価値が高すぎるため、駐車場も併せて売却を行い子ども3人にそれぞれマンションを残すといった方法も考えられます。また不動産が遺産の中にある場合には無用なトラブルを避けるためにも遺言を作成することが望まれます。

「親と同居している相続人がいる場合」のトラブル事例

親と同居している子がいる場合には親との距離が近いため、同居していない子と相続発生後にトラブルになる可能性が高くなります。この章では親の介護をして貢献している相続人がいるケースと、反対に親の財産を使い込んでしまっている相続人がいるケースでの相続トラブル事例を解説します。

ケース3:長男が親の面倒をみている

家族構成:母、長男、次男

母の資産状況:預貯金(3,000万円)

その他:長男が母の面倒を長年みており、次男は疎遠。

発生した相続トラブル:

【発生した相続トラブル】

母の相続開始後、次男が自らの法定相続分である1/2の権利を主張。長年母親の面倒を看てきた長男としては納得がいかず相続トラブルに発展。

【原因】

民法では親の介護をした相続人が多くの相続分を主張できるという決まりがないため、このような問題が発生します。亡くなった方の財産の維持・増加に特別の貢献があった場合に「寄与分」という特別の権利が認められてはいるものの、単に親の介護をしていただけでは不十分で、たとえば親の介護費用を子が捻出していたような場合に初めてその分の権利が認められます。

【予防策】

特別に世話になった子等の相続人がいる場合には、遺言を残してあげることでより多くの財産を、渡したい相続人に渡すことができます。遺言を作成しておいた方がよい典型的なケースとなります。また生命保険に加入して受取人を渡したい人に指定しておけば、確実に渡すことができるため活用するとよいでしょう。

ケース4:同居をしている次女が親の財産を使いこんでいる

家族構成:父、母、長女、次女

父・母の資産状況:自宅、賃貸マンション、預貯金

その他:長女は結婚して家を出ており、同居の次女が親のお金を使いこんでいる

【発生した相続トラブル】

認知症気味で判断能力が低下していた親の財産を同居の次女が使い込んでしまっていたため、親の死後、長女が次女に対して使い込んでいたお金も含めて権利を主張して争いに発展。

【原因】

認知症等によって判断能力が低下している高齢者の場合には、たとえ子であっても使用状況が分からないことや財布の紐が緩くなってしまうことがよくあり、同居している子が親の財産を勝手に使い込んでしまい後日トラブルとなることが多くあります。

【予防策】

認知症等により意思能力が低下している親がいる場合で財産管理に不安があるようなケースでは、成年後見制度を利用することで子の勝手な使い込みを防ぐことができます。

「離婚歴がある場合」の相続トラブル事例

離婚歴がある場合、前妻の子や後妻との関係等で相続に大きな影響を及ぼします。ここからは離婚歴がある場合に起きる相続トラブルの事例について解説していきます。

ケース5:前妻の子と後妻の子の争い

家族構成:父、前妻の子、後妻の子

父の資産状況:自宅、有価証券、預貯金

その他:後妻の子は前妻の子の存在を知らされておらず、父の相続発生後に初めて前妻の子が現れた。

【発生した相続トラブル】

後妻の子は前妻の子の存在を知らず父の財産は100%自分のものと思っていたが、後妻の子の出現により相続分が50%になり納得ができず相続トラブルに発展。

【原因】

父が子に離婚歴や前妻の子の存在を後妻の子に知らせていなかったため、突然現れた前妻の子の出現により相続トラブルに発展してしまっています。

【予防策】

離婚歴があり前妻・後妻それぞれに子がいるような場合には子が知らないもしくは知っていても面識がないことにより、相続発生後にそれぞれが権利を主張して争いごとに発展しやすくなります。ここでも予防策としては遺言の作成が必須となるでしょう。遺言があることで双方の子が顔を合わせることなく相続手続きを進めることができますので、相続発生後の手続きもスムーズになります。

ケース6:ホステスの後妻出現

家族構成:父、母(死去)、長女、後妻

父の資産状況:自宅、有価証券、預貯金

その他:長女は後妻の存在を知らない。後妻は父よりも30歳若い外国籍の人。

【発生した相続トラブル】

相続が発生する1年前に父が30歳も若い、飲み屋で知り合った外国籍の女性と婚姻関係を結んでいたことが分かり、長女は父の財産狙いの結婚であり後妻に財産を相続させたくないと主張し相続トラブルに発展。

【原因】

長女の立場からは財産狙いの戦略結婚だと思われ、後妻には1円も渡しくないという心情面の理由から相続トラブルに発生してしまいます。

【予防策】

結婚する意思は当人の自由ですから子の立場としてはどうすることもできませんが、遺言の作成が望まれます。また遺言の最後に付言事項といって財産の分け方以外にも相続人に届けたい想いや気持ちを記載することができますので、生前に伝えることができなかったことを付言事項に記載して説明することで遺された遺族が納得できることも多くあります。

ケース7:内縁の妻は1円も財産がもらえない

家族構成:本人、内縁の妻

本人の資産状況:自宅、預貯金

その他:本人と内縁の妻との間に子はいない

【発生した相続トラブル】

本人死亡後に長年連れ添った内縁の妻が財産を相続しようとしたところ、相続権がないことが分かり本人の兄弟に財産を持っていかれることになり相続トラブルに発展。

【原因】

内縁の妻、つまり婚姻関係にない男女は法律上は夫婦とは認めらず内縁の妻には基本的には相続権が発生しません。それを認識していなかったことから、内縁の妻と法律上の相続人との間で相続トラブルが発生しました。

【予防策】

内縁の妻には相続権が法律上発生しないことから、財産を遺したいのであれば婚姻届を提出するか、遺言の作成は必須です。本ケースでも仮に遺言で内縁の妻に遺産をすべて相続させると書いていれば兄弟姉妹には遺留分がないため、遺産全額を内縁の妻に相続させることが可能となります。

「子どもがいない夫婦」に起きる相続トラブル事例

相続は子がいると財産は基本的に子にいきますが、子がいない夫婦の場合には相続人の範囲が広くなりますので相続トラブルに発展する可能性が高くなります。ここからは子どもがいない夫婦に起きる可能性が高い相続トラブルの事例について解説します。

ケース8:妻と夫の兄弟姉妹の争い

家族構成:夫、妻

本人の資産状況:自宅(時価5,000万円)、預貯金(1,000万円)

その他:夫婦間に子はいないため、法定相続人は妻と夫の兄弟となる

【発生した相続トラブル】

夫と長年自宅で暮らしてきた妻は、老後の生活ために自宅と預貯金を相続するつもりだったが、法定相続人である兄弟が1/3の権利を主張してきたために相続トラブルに発展。

【原因】

夫婦間に子がいない場合には、第二順位の親や祖父母が相続人となり、親や祖父母が他界している場合には、第三順位の兄弟姉妹が相続人となります。 妻側からすると血縁関係がなく疎遠であることが多いため、夫の財産の一部が夫側の親族にわたることに納得がいかず争いごとに発展してしまうケースです。

【予防策】

遺言を作成することで子がいない夫婦間の相続トラブルを解決できます。特に故人の兄弟姉妹には遺留分がないため、本ケースでもすべての財産を妻に相続させるという内容の遺言があればすべての財産を妻が相続することが可能となります。

ケース9:配偶者側親族に財産が渡ってしまう

家族構成:夫、妻

本人の資産状況:自宅(時価5,000万円)、預貯金(1億円)、有価証券(1億円)

その他:夫婦間に子はいないため、法定相続人は妻と夫の兄弟となる

【発生した相続トラブル】

夫は資産家であり自分が亡きあとは妻に財産をすべて相続させたいと考えていたが、妻が将来亡くなった際に妻側の親族に財産がいってしまうことを懸念。そのため遺言に「妻亡き後は自分の家系の親族に財産を相続させたい」と記載したが法的効力がなく、妻側の親族と相続トラブルに発展。

【原因】

遺言では自分の次の相続までは分割方法を指定できますが二代先まではできません。本ケースでも子がいないため妻が将来亡くなった後のことまでを遺言に書いたのですが、法的効力がなく争いになってしまいました。

【予防策】

遺言では一代先までしか分割方法を指定できないため、二代以上先までの相続を考えたい時には「信託」を利用することで問題を解決できることがあります。

信託を活用することでたとえば、一次相続の権利は妻にするが妻が亡きあとの二次相続については自分の家系の親族に相続させたいという希望を実現することができます。

本ケースでも遺言ではなく信託を活用していればトラブルを未然に防ぐことができる可能性がありました。ただし信託も30年という期間設定が決められていますので本人が他界した後に妻が30年以上生きると希望を実現できないといったこともありますので注意が必要です。

「遺言」は相続トラブル解決の特効薬!

ここまで様々な相続トラブルのケースを紹介してきましたが、すべてのケースを読まれた方は相続トラブルの予防策には遺言の作成が重要であることが分かったと思います。相続トラブルのほとんどは遺言の作成によって解決することができます。

こんな時は遺言をのこしておきましょう。

・前妻、後妻の間にそれぞれ子どもがおり、子ども同士を争わせたくない

・認知した子がいて、その子にも財産を残してあげたい

・遺産争いが生じる可能性がある

・家業の承継と継続の希望がある

・特別に財産を多く与えたい人がいる

・夫婦間に子がいないので配偶者に全財産を相続させたい

・遺産を与えたくない相続人がいる

・遺産を寄付したい  等々

民法は財産を相続する側よりも遺す側の意思を尊重しており、遺言があれば原則は遺言通りの内容で相続が行われます。そのため遺言があることで揉める原因がなくなるのです。また遺言がなければ、原則法的相続人しか財産を相続することができませんが、遺言があれば相続人以外の人へも自由に遺産を分配することが可能となります。

このため遺言を作成することは将来の相続トラブルの火種を消すために最も有効な手段であるといえます。

ただしケース9のように遺言によっても解決でないケースもありますので、そういった際には信託といった方法を使うことで対応できる場合もあります。

このように遺言は相続トラブル予防に大きな効果を発揮しますが、「自分が死んだあとはすべての財産を配偶者に相続させるが、配偶者が死んだあとは自分の兄弟に相続させたい」といった二代先までの指定ができない点が遺言の限界であり、二代以上先までの遺産相続の方法まで考慮したい場合には「信託」を活用するとよいでしょう。

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