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〈あつ湯〉派だった温泉学者も魅了…極上の〈ぬる湯〉に入れる温泉8選【健康力が高まる入浴法も伝授】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月7日 7時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

半身浴やシャワーで済ませてしまうことも多い今日ですが、「全身浴こそ日本人の健康を支えてきた」と、温泉学者であり、医学博士でもある松田忠徳氏はいいます。松田氏の著書『全国温泉大全: 湯めぐりをもっと楽しむ極意』より、おすすめの入浴法について見ていきましょう。

日本人は昔から「全身浴」が基本だった

まず入浴前に水分をとってください。夏を除いて常温のミネラルウォーターか、中高年の方はぬるま湯、お茶が好ましいですね。

浴槽に入る前に、しっかりとかけ湯をする。熱い湯にいきなり入ると、血圧が急上昇して危険です。これを防ぐ意味と、とくに下半身の汚れを落とす大切な入浴マナーとして。他人に不愉快な思いをさせない、他の入浴者の心を冷やす行為をしない。「輪になって和を極める」――。これこそが日本の“湯浴みの心”であると考えます。

浴槽に入ったら、しばらく横隔膜の高さ(みぞおちあたり)まで浸かり、続いて肩まで浸かります。手足を伸ばして“無我の境地”で浸かりましょう。肩の力を抜き、湯の温もりに素直に身をゆだねましょう。

最近は一日中パソコンに向かった仕事、それにスマホやゲームなどで、首への負担が多く、若い人の間にも肩こり、首こりが非常に多くなっているようです。肩から上へ血液が流れにくく、代謝も滞る。したがって、眼精疲労も目立ちます。

女性のなかには、もっぱら半身浴という人も少なくないようです。半身浴では、これらの症状を改善することは難しいでしょう。全身浴で肩、首筋まで温め、脳までスムーズに血が流れるように意識したいものです。女性に多い冷え性の方にも有効です。

シニア世代は首筋をよく温めて、自律神経を正常に機能させることが、認知症予防にもつながります。日本人は昔から全身浴が基本でした。この入浴法こそが、日本人の健康を支えてきたということです。全身の皮膚から温泉の含有成分を貪欲に体内に取り込む――。理に適った日本の入浴法です。なにせ皮膚を広げると男性で畳二枚分にも相当するといわれます。加えて温熱作用により、代謝も早く高めてくれます。

体に負担をかけずに血流を全身に巡らす「分割入浴」

季節やその人の体温、体質によっても多少異なりますが、1回目は体が冷えているので5分から10分近くは浸かることができるでしょうか。額に汗がにじんできたら一度上がる。もちろんその前に暑苦しさを覚えたり気分が悪くなったら、我慢せずに浴槽から出たり、半身浴、あるいは浴槽の縁に座り足浴の状態になるのも良いでしょう。

2回目の入浴は体が温まっているので、1回目より短く、5分前後、3回目は3分前後と分割することによって、体に負担をかけずに無理なく、血流が足の先から脳まで巡るように時間をかけて繰り返し入浴をしてください。入浴と入浴の間は、足浴の状態でも、洗い場に行っても、露天風呂に出てもいいでしょう。

たとえ半身浴の状態であっても、湯煙が浴場にこもっているような本来の温泉であれば、温泉成分、とくにガスを湯気から吸入することができます。

代謝が促進される良質の温泉では5分間湯に浸かっているのと、5分間縄跳びをするのと消費カロリーはほとんど変わりありません。16~17キロカロリーです。ウォーキングでは十数分に相当するカロリー消費で、1キロメートル以上も歩ける時間です。

このように温泉浴はかなり体力を消耗しますので、無理をしないことが大切です。日本の入浴は、もっぱら爽快感を得る目的のサウナとは異なりますので、汗を出すことに汲々としていては本末転倒です。

温泉場に来てまで、体を洗い流さない

副交感神経を優位にしながら、肩の力、心の力を徐々に解放する。湯が体に心に染み入るのをイメージしながら、感じながら、ふだんの家庭風呂や慌ただしい銭湯とは異次元の世界に遊んで欲しいものです。ですから頭や体を洗うのは二の次。いいえ、むしろ洗わないのがベストかもしれません。せっかく“非日常”の温泉まで来たのですから、湯に浸かりながら、こころの襞に溜まった汚れ、穢れを時間をかけて流したいもの。

実際、“ホンモノ”の温泉に入ると、私たちの体の皮脂と含有成分で天然の石けん状態になりますので、肌の古い角質や汚れは入浴中に自然に流れます。それを「せっかく温泉まで来たのだから」と、ふだんより石けんを泡立たせてしまっては、浴後に肌の水分を失ってむしろガサガサになりかねません。

洗髪は、他に入浴者がいないような場合、浴槽の縁で私はときどき、かけ流される湯を汲んで50杯、100杯と還元力のある湯を頭からかけます。肩まです~っとする。シャンプーは不要です。とくにアルカリ性の湯の爽快感はたまりません。

「ぬる湯」のススメ

気象庁では最高気温が35度以上の日を「猛暑日」と呼んでいますが、40度前後の猛暑日がふえるにつれ、「酷暑日」という言葉まで耳にすることがあります。

かつては「暑い夏こそ、熱いラーメンを食べて乗り切ろう」などと、元気のいい日本人は多かったものですが、涼しいといわれる北海道でも一般家庭でエアコンの使用が珍しくなくなった昨今、このような威勢の良い言葉は聞かれなくなっています。

心配なのは食べ物、飲み物を含めて体を冷やす日本人の生活習慣は、免疫力を低下させかねないことです。酷暑を乗り越えるにも、自律神経のバランスを整え、免疫力を高める必要があります。

それにはやはりシャワーではなく、入浴、温泉です。日本は“温泉大国”といわれるだけあって、泉質だけでなく湯温もじつにバラエティーに富んでいます。夏は「あつ湯」に入らなくても、むしろ「ぬる湯」で十分です。“夏温泉”がまさにぬる湯です。

暑い日が続く夏は自律神経が乱れがちで、ぬる湯で長湯を楽しみながら“リラックスの神経”副交感神経を優位にします。副交感神経が優位になると、免疫細胞である白血球中のリンパ球が活性化します。しかも真夏にぬる湯から上がった後の清涼感は、なんとも言えない悦楽そのものです。

熱くも冷たくも感じない日本人の「不感温度」は欧米人より少し高く35~37度ぐらいです。ぬる湯の温度に定義はないのですが、体温に近い36度前後から40度未満と考えてよいでしょう。ただ暑い夏は32~33度程度からでも大丈夫でしょうが、体温が下がると免疫力にも影響を与えかねませんので、温かい温泉と交互浴を心がけるようにしましょう。

私の故郷は、平成20(2008)年7月にサミット(主要国首脳会議)が開催された北海道の洞爺湖温泉街。もちろん産湯も洞爺湖温泉で、大学に進学するため洞爺湖温泉街を離れるまで、温泉があるのが当たり前の環境で育ちました。ただ洞爺湖温泉の源泉は60度前後の高温泉だったものですから、私の“温泉DNA”があつ湯に適応するようになっていたのは自然の流れでした。

これまでもふれたように、かつて日本人の浸かる湯温は42度前後といわれていました。ですから日本人は世界でも珍しい「高温浴を好む民族」といわれてきたものです。北海道、東北、北陸などの雪国や、海辺の温泉では45度前後で入浴するのはふつうでした。ただ日本人の低体温化とともに、若い世代を中心に42度では熱いと感じる人がふえています。

私はあつ湯で育ちましたが、じつは4、5年前から“ぬる湯派”に転じました。ぬる湯でもレベルの高い温泉では抗酸化力に優れていることを、私どもが検証してきた延べ650名に及ぶ「入浴モニターによる温泉療養効果」の実証実験で、科学的に確認できたからです。しかも高温泉では得られにくいぬる湯のメリットは、美肌効果が顕著だということです。

天然温泉きぬの湯(茨城県)、昼神温泉(長野県)、榊原温泉(三重県)、奥津温泉(岡山県)、俵山温泉(山口県)、古湯温泉(佐賀県)、長湯温泉(大分県)、妙見温泉(鹿児島県)などのぬる湯で、温泉の抗酸化作用による活性酸素の除去、抗酸化力の増強とともに、美肌効果(皮膚の張り、抗酸化力、保湿力など)を確認しました。

皆さんも、夏こそ“ぬる湯温泉”で健康力を高めてみませんか? 温泉の楽しみ方のバリエーションを広げてみてはいかがでしょうか?

松田 忠徳 温泉学者、医学博士

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