年金月4万5,000円の70歳・独身男性「もう、生きていけない」の悲惨…役所に助けを求めるも、担当者にいわれた冷酷なひと言
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月28日 10時15分
憲法で定められている「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する「生活保護」。厚生労働省『被保護者調査』から、生活保護を受ける年金生活者の実情を紐解いていきましょう。
おひとり様と高齢者の増加で「生活保護者」は右肩上がり
厚生労働省『令和4年度被保護者調査』によると、2022年(7月1日時点)の生活保護者世帯は161万9,452世帯。全国の世帯数は5,431万世帯なので、全世帯の3%が生活保護を受けている計算になります。
経年で生活保護世帯をみていくと、3年連続で前年を上回っています。また2018年、2019年は前年を下回ったものの、2000年以降、常に前年比プラスを記録しています。
驚きなのは、その増加幅。2000年の生活保護者世帯は72万4,561世帯と、いまの半分以下。100万世帯を超えたのは2005年で、この年、101万2,855万世帯を記録。2000年代、最も増加幅が大きかったのは、リーマンショックの影響も大きい2010年。前年121万5,214世帯から、136万1,149世帯と、12.01%の増加。近年は増加のスピードも緩やかになっています。
生活保護世帯の大幅な増加。その一因として挙げられるのが、単身世帯の増加と、高齢者世帯の増加。
生活保護世帯の家族構成に注目していくと、全161万9,452世帯のうち、単身世帯は135万4,614世帯と、実に84%を占めます。それだけ、単身者のほうが貧困に陥りやすいといえるでしょう。近年、進行する核家族化により、貧困状態に陥る単身者も増えていったと考えられます。
また全161万9,452世帯のうち、65歳以上の高齢者がいる高齢者世帯は91万1,055世帯。実に56%を占めます。さらに84万1,750世帯は単身の高齢者。元々、収入を得る手段が限られている高齢者の家計は脆弱なことが多く、さらに核家族化の進行によりおひとり様の高齢者が増加。家族の形態の変化により、生活保護を受ける世帯も増えていったといえるのです。
生活保護を受ける高齢者世帯を地域別にみていくと、世帯数が最も多いのは「東京都」で12万2,550世帯。「北海道」「埼玉県」「千葉県」「大阪府」と続きます。一方、高齢者世帯に占める生活保護世帯の割合でみていくと、全国平均は5.38%。そんななか、最も割合が高いのは「沖縄県」で7.2%。「東京都」「徳島県」「青森県」「佐賀県」と続きます。
【都道府県別「高齢者の生活保護世帯率」ワースト5】
1位「沖縄県」12,462世帯(7.20%)
2位「東京都」122,550世帯(6.91%)
3位「徳島県」6,223世帯(5.93%)
4位「青森県」9,017世帯(5.86%)
5位「佐賀県」3,845世帯(3.63%)
生活保護を受ける「年金受給者」の平均年金受取額「月4万5,560円」
高齢者の生活を支える公的年金。厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、44.0%が収入のすべてが公的年年金と回答。収入の80~100%も含めると6割を超え、いかに高齢者が年金に依存しているかが分かります。
年金を受給しながら生活保護を受けているのは90万1,238人。そのうち65歳以上が74万3,981人、老齢・退職年金等を受給しているのは65万7,544人で、平均年金受取額は4万5,560円です。そして高齢者世帯の生活保護費(扶助額)は、平均6万6,829円。年金と生活保護費、月11万円程度で最低限度の生活を送っている……生活保護を手にする高齢者の平均像がみえてきました。
厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると厚生年金受給者で生活保護受給者平均の年金月4万5,560円に満たないのは全体の1.4~2.0%とごくわずか。一方で国民年金のみの受給者では11.6~25.6%。国民年金は満額受給でも月6.8万円(令和6年度)なので、当然といえば当然ですが、年金への依存度が高い高齢者、国民年金だけだと、老後の生活はひっ迫し、生活保護に頼らざるを得ない人も多いようです。
貧困に陥りやすい低年金の高齢者。しかし、低年金だからといって誰もが生活保護を受けられるとは限りません。「年金が少なくて、もう、生きていけない!」と、役所に助けを求めた70代の独身男性がいたとします。
――お仕事はされてますか?
――いえ
――元気そうなので、働いてみてはいかがでしょうか?
総務省『労働力調査(2022年度)』によると、70代前半の就業率は33.5%と、3人に1人は働いています。また70代後半の就業率は11.0%と10人に1人は働いている状況。この数値は年々上昇し、いまや70代でも働くことは普通の光景になりつつあります。定年を迎えて隠居生活をしているような高齢者であっても、生活に困窮しているなら働いて解決、というのは冷酷に聞こえても真っ当なアドバイスなのです。
このように生活保護を受けるためには、収入が最低生活費を下回っていることのほか、最低生活費を下回る貯蓄等資産もないこと、親族に頼れる状態にないことなどが条件。働けるなら働いて、それでも収入が最低生活費を下回っていれば、その差額は支給される可能性があります。生活保護費は元々わたしたちの税金。本当の困窮者でなければ、基本的に支援を受けることは許されません。
[参考資料]
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