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「円安阻止介入」目前!?…止まらない〈投機的円売り〉に終わりは来るのか【国際金融アナリストの見解】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月2日 10時15分

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(※画像はイメージです/PIXTA)

日銀によるマイナス金利解除決定後も止まらない円安。要因とされる「投機的な米ドル買い・円売り」を打開するために、2022年以来の日本の通貨当局による「円安阻止介入」が実施される可能性も高まってきたと、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は指摘します。4月の相場の展開予測を詳しくみていきましょう。

4月の「FX投資戦略」ポイント

〈ポイント〉

・3月の米ドル/円は、後半に上昇が再燃したことで、一気に2022年10月の高値を更新した。主因は、日米政策金利差が「大幅な米ドル優位・円劣位」となったことにより、投機的米ドル買い・円売りの動きが根強く継続したためと考えられる。 ・これに対して、2022年以来の日本の通貨当局による「円安阻止介入」が実施される可能性も高まってきたようだ。 ・4月は投機の円売りvs介入の攻防が中心となり、145~154円で荒れた展開を予想。

3月の振り返り=米ドル高値更新で152円に接近

3月の米ドル/円は一時146円台まで下落したものの、その後上昇が再開すると、19日の日銀によるマイナス金利解除決定の後からは一段と米ドル高に向かい、2022年10月に記録したこの間の高値をわずかに更新し、152円に迫る動きとなりました(図表1参照)。

ところで、月後半の高値を更新し、152円に迫った米ドル/円上昇の動きは、日米金利差からはかい離の目立つものでした(図表2参照)。日米政策金利差(=日銀の政策金利とFFレート誘導目標上限の差)の米ドル優位・円劣位は、日銀によるゼロ金利解除、そして20日に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)が予想より「ハト派」との評価により、米金利が低下気味で推移したことから、縮小傾向となったのでした。それでは、そういった状況のなかで、なぜ「米ドル高・円安」が拡大したのでしょうか。

金利差からかい離した「米ドル高・円安」の要因を、ある程度説明できそうだったのは、投機筋による米ドル買い・円売りの拡大でした。ヘッジファンドなどの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジション(対米ドル)は、売り越し(米ドル買い越し)が2月末の13万枚から一時は10万枚まで縮小しましたが、3月後半は13万枚近くまで再拡大しました。こんなふうに、投機筋の米ドル買い・円売りが再燃するなかで、米ドル/円は152円に迫る上昇となったわけです(図表3参照)。

投機筋による「ドル買い・円売り」が再拡大する背景

それでは、日米金利差の米ドル優位が縮小に向かったにもかかわらず、投機筋ではなぜ米ドル買い・円売りが再拡大に向かったのか? それは、金利差の大小の変化とは関係なく、米ドル優位の状況下においては、「米ドル買い・円売り」が圧倒的有利といえるためではないでしょうか。

足元の日米政策金利差の米ドル優位・円劣位は、3月の日銀によるマイナス金利解除で、5.6%から5.5%に縮小しましたが、依然として、記録的ともいえる「大幅な金利差」があることには変わりありません。

最近のように、日米の政策金利差の「米ドル優位・円劣位」が5%程度だったのは、2007年にもありましたが、この時にCFTC統計の投機筋の円売り越しは、18万枚以上に拡大しました(図表4参照)。確認できる限りで、同統計の円売り越しが15万枚以上に拡大したのはこの時だけなので、この2007年の円売りは、極端に行き過ぎた「円売りバブル」の発生といえるのではないでしょうか。

要するに、直近の日米金利差の米ドル優位・円劣位は、過去に「円売りバブル」が発生したときと同様の「記録的な大幅」となっているわけです。それを踏まえ、投機筋にとって有利な米ドル買い・円売りが継続し、ついに2022年10月の米ドル高・円安の記録も更新してしまった、ということではないでしょうか。

ただし、このような米ドル高・円安に対して、鈴木財務相は3月27日、「あらゆるオプションを排除せずに断固たる措置をとっていきたい」と発言しました。こういった表現は、私の経験則として、通貨当局による為替市場への介入が決まったあとで使う可能性が高いものです。

ちなみに、日本の通貨当局は2022年9~10月に円安阻止で市場に介入しましたが、介入前に実質的な責任者である神田財務官は、「あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」(9月8日「三者会合」後の記者会見)と語り、この発言後、米ドル高・円安が進むとすぐに米ドル売り・円買いの市場介入に踏み切りました(図表5参照)。

この「神田発言」と上述の「鈴木発言」では、市場介入を示唆する「為替市場において必要な対応」という表現が、「断固たる措置」となっていることはあるものの、基本的には似ていると言ってよいでしょう。以上を踏まえると、通貨当局は2022年以来の円安阻止介入をすでに決めたか、あるいは決めつつある可能性が高いと想定します。

4月の注目点=投機的円売りと円安阻止介入の攻防

これまで見てきたように、根強い米ドル買い・円売りの背景には、日米金利差の米ドル優位・円劣位が大幅であることの影響が考えられます。それでは、この金利差が縮小に向かうかといえば、アメリカの景気は1~3月期も、実質GDPの伸び率が2%以上と底固い状況が続いているとの見方が強く、米国株も最高値圏での推移が続いている状況下においては、当面は見込みが薄そうです。

となると、4月にさらに米ドル高・円安が拡大するかは、今のところは大幅な金利差を拠り所とした投機的米ドル買い・円売りと、日本の通貨当局による円安阻止介入の攻防が最大の焦点といえそうです。

2022年の円安阻止介入では、介入を始めてから円安が一段落するまで約1ヵ月かかりました。ただ当時の米ドル高・円安は、米インフレ対策の大幅利上げが主因と見られ、そのような利上げの終了がまだ見込めない状況だったことを踏まえると、かなり厳しい判断だったと考えられます。それに比べると、今回は米利上げ再開の可能性は低いわけですから、介入によって円安を終息させることは、2022年時よりも見込みやすいようにも感じます。

以上を踏まえ、4月の米ドル/円は、投機的な米ドル買い・円売りと円安阻止介入の攻防が中心となる結果、145~154円での荒っぽい展開を想定しています。

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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