円安加速1ドル156円突破! 政府日銀は連休中に「覆面介入」?待ち受ける「ミセス・ワタナベ」との攻防/第一生命経済研究所・熊野英生さん解説
J-CASTニュース / 2024年4月26日 18時10分
円安はどこまで進む?
円安の加速が止まらない。東京外国為替市場では2024年4月26日、円相場は34年ぶりとなる1ドル=156円台後半まで下落した。
同日、日本銀行が金融政策決定会合を開き、現在の金融政策維持を決め、円安対応観測に「ゼロ回答」だったことが伝わり、一気に円を売ってドルを買う動きが強まったためだ。
はたして政府・日銀の為替介入はあるのか。円安はどこまで進むのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生さんに話を聞いた。
海外での「覆面介入」、狙いは市場の疑心暗鬼
――ドル円レートは1ドル156円台にまで突入しました。ズバリ聞きますが、政府・日銀が為替介入をすると思いますか。
熊野英生さん すると思います。まさにトリガー(銃の引き金)に指が引っかかっている状態ですよ。本日(4月26日)、鈴木俊一財務大臣はぶら下がり取材で何も喋りませんでした。あれは、日本銀行の金融政策決定会合の結果を待っていたと思われます。
――しかし、その日銀は何の政策修正を行なわず、現状維持のままです。
熊野英生さん なんらかの行動を起こすことで円安に対応するとの見方もありましたが、動きはありませんでしたね。こんなことでは円安の加速は止まりません。
――政府・日銀が為替介入をするとすれば、いつ、どんなかたちになるでしょうか。
熊野英生さん 覆面介入を試みると思います。日本では4月末から大型連休が始まります。日本市場が閉まっている時期に、投機的な円安が進むかもしれないという危機感から、そのタイミングで円安の思惑にくさびを打ち込んでおきたいと考えているはずです。
4月27日からの3連休に、日本時間の夜、ロンドンやニューヨークの外国為替取引の時間に合わせて、現地の通貨当局に委託して介入するのではないでしょうか。介入したかどうかは、しばらくわかりません。
市場が疑心暗鬼でいる期間が長ければ長いほど効果的です。インターバンク市場(外国為替を対象とする銀行間取引市場)とは、そういうものです。
イエレン米財務長官「介入はまれなこと」発言の真意
――しかし、米国のイエレン財務長官が4月25日、ドル円相場に関して「為替市場への介入はまれな出来事であるべきだ」と発言しています。
これは、日本政府・日銀に対する介入への牽制ではないですか。
熊野英生さん それでも日本政府・日銀はやるでしょう。やらないと、フリーフォール(自由落下)になり、1ドル157円、158円にすぐいってしまいます。
イエレン財務長官の発言の真意は、日本の為替介入によって、日本政府が外国為替資金特別会計(外為特会)に持っている米国の長期国債をキャッシュ化して、円買いドル売りの資金に使うと、米国の長期金利が上がって困るということです。
米国としては、米政府の国債管理政策をかき乱してほしくないということです。
為替介入の逆張りに賭ける「ミセス・ワタナベ」たち
――熊野さんはリポート「強まる為替介入の警戒感~1ドル155円を突破、さらに進むのか~」(4月26日付)のなかで、「一方、(政府・日銀の)為替介入を待ち構えている人もいる」と指摘していますね。どういうことですか。
熊野英生さん それは、金融・証券用語で「ミセス・ワタナベ」と呼ばれる人々のことです。「ミセス」と言っても、実際はほとんど男性です。外国為替証拠金取引(FX)などの取引を活発に行う日本の個人投資家たちの俗称です。日本人の主婦やサラリーマン投資家のことを、欧米の報道機関がそう名付けました。
この「ミセス・ワタナベ」の一部に、為替介入が行われる時、いったん円高に振れたタイミングで、逆に円売り・ドル買いを浴びせかけようという人たちがいます。介入の効果が限定的だという読み筋で、為替が再び円安に振れる可能性に賭ける投機的な思惑があります。
こういう逆張りの売買は、昔は機関投資家もやっていましたが、現在は対抗してもつぶされる経験を積んで懲りているのでやりません。しかし、最近は個人投資家の存在感が増しています
――ということは、「ミセス・ワタナベ」の一部が逆張りをしたら、政府・日銀の介入の効果も薄れてしまうということですか。
熊野英生さん 前回の介入(2022年9~10月の計3回)で、日本政府は総額9兆円を使いました。日本の個人投資家の資金は限られているので、たいしたことにはならないでしょうが、世界中に同じことをやる人がたくさん出てきたら、どうなるかわかりません。
米大統領選「トランプ優勢」だけが円安歯止め?
――今後、円安はどこまで進むでしょうか。
熊野英生さん 当面、1ドル158円くらいまで進むでしょう。
いまのところ、米国のインフレが収まる兆候がないので、米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)が利下げに踏み切るという見方が後退しています。日米の金利差が縮小する動きは見られず、円安を修正する材料は乏しいのが現実です。
過度な円安が修正される可能性があるとすれば、今年11月の米大統領選でトランプ氏が優勢になった時。トランプ氏は4月23日に、34年ぶりのドル高円安に対してSNS上で、「米国の製造業にとって大惨事だ」と発言しています。
彼は、日本と中国の貿易収支を意識しています。トランプ氏が優勢になれば、FRBに年内利下げを促す可能性がありますが、まだ、現実味はありません。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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