人気の衰えない「首都圏タワマン」だが…住人がもうすぐ直面する「苦難」とは【マンショントレンド評論家が警鐘】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月14日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
2000年頃から本格化したブームにより、現在までに多くのタワーマンションが竣工されました。そんな衰え知らずの人気を誇るタワマンですが、住人に待ち受ける「困難」とはいったい何なのでしょうか。『60歳からのマンション学』(講談社)の著者でマンショントレンド評論家の日下部理絵氏が解説します。
「タワマンの大規模修繕」は困難
1997年の建築基準法の改正でタワマンが建設しやすくなり、ブームが到来したのが2000年頃。首都圏ではʼ03〜ʼ09年までに年間50棟以上のタワマンが竣工された。
タワマンの大規模修繕は、おおよそ15〜18年の周期といわれるが、これから首都圏では多くのタワマンで大規模修繕が予想される。一般的なマンションの大規模修繕の相場は国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、1回目で1戸当たり約100万円といわれるが、タワマンの場合はそれよりも高くなることが多い。
たとえば次のような実例がある。
〇エルザタワー55(埼玉県川口市)……1998年築、地上55階建て、高さ185m、総戸数650戸、1回目の大規模修繕費約12億円(1戸当たり185万円)
〇センチュリーパークタワー(東京都中央区)……1999年築、地上54階建て、高さ180m、総戸数756戸、約17.5億円(1戸当たり231万円)
〇ザ・ガーデンタワーズ(東京都江東区)……1997年築、地上39階建て、高さ134.3m、サンライズタワーとサンセットタワー2棟で構成、総戸数470戸、約8億円(1戸当たり170万円)
このように、工事金額の総額が大きいため、長期修繕計画の試算が甘いと修繕積立金不足が起きやすい。特に物価上昇や消費税の増税を組み込めていなかった管理組合は、近年の工事費上昇についていけず、一時金の徴収や計画より遅い築20年前後で1回目の大規模修繕を実施するなどの対応をしている。
ただし、一般的なマンションの大規模修繕が10〜15年周期に対して、タワマンは15〜18年周期と後ろ延ばしが多く、1戸当たりは高くみえても実質的に安い場合もある。
修繕の施工業者が限られる
タワマンの大規模修繕はまだ事例が少なく、工法やノウハウが、広く一般に確立されたとまではいえない。
タワマンの構造上、特に高層階では風対策をはじめとした、特殊かつ高度な作業ノウハウが求められる。また工期も2〜3年と長期間に及ぶことも珍しくない。そのため、タワマンの大規模修繕を行うのは、新築時に建物を建設したゼネコンや、その子会社など一部の施工業者に集中するケースが多い。
足場は、一般的なマンションの大規模修繕で使用される「組み立て式」ではなく、屋上から吊り下げる「ゴンドラ」や、柱を立てて設置する「移動昇降式足場」を使用することが多い。そのため、飛散や落下防止対策のほか、風雨などの気象状況によって工事の進度が大きく影響を受けやすい。
また、外観フォルムが独特など“デザイン性が高いタワマン”は、高層階と中層階、低層階では、足場の種類、工事の方法を変えるなど複雑になることもある。
さらに販売時は魅力的だったラウンジやカフェ、スパやプール、屋上デッキといった共用施設やさまざまな設備は、独自性を打ち出していればいるほど、別途改修が必要で費用もかさむ。
そもそも、大規模修繕の「決定」が難しい
住人の「合意形成」が一般的なマンションより難しい
一般的なマンションは平均戸数が約60戸のなか、タワマンは戸数規模が大きく、1棟100戸以上、なかには1,000戸以上も存在する。そうなると“ひとつの街”のレベルだ。
マンションでは、大規模修繕の工事内容にもよるが、共用部分の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く)に該当すると判断される場合、総会での「特別決議」、つまり組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の多数で決することになる。そのため、管理組合の合意形成が難しいとされる。
特に高層階と低層階では区分所有者の世帯収入や価値観の違いも影響する。また高層階では、雨風の影響などで外壁に損傷を受けやすいなど、層階によって抱える問題も異なる。しかし、修繕積立金の負担は、一般的に階層は関係なく、専有部分の床面積割合で決定している。
マンションは買ったら終わりではない。大規模修繕などに多額の維持費がかかるということを、肝に銘じておきたい。
日下部 理絵 マンショントレンド評論家 オフィス・日下部 代表
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
私たちって、パワーカップルだよね?…世帯収入900万円、子どもなし40代夫婦がタワマンの16階から見る光景
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月13日 11時15分
-
世帯収入1,000万円超夫婦が「家賃20万円のタワマン」に住んで「後悔していること」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月11日 19時30分
-
外出が面倒、窓掃除の作業員と目が合う…住民が感じる「タワマンならでは」のデメリット【マンショントレンド評論家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月7日 10時15分
-
「賃料下げてくれないかな」「老後まで住む気?もちろんないです」…タワマン住民が明かした本音
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月4日 19時0分
-
タワマンは「買うべきか」?「持ち家派」「賃貸派」それぞれの主張
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月3日 17時0分
ランキング
-
1手取り30万円・40歳の新婚男性「後悔しています」「老後資金を考える余裕はない」強い不安のワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月30日 20時0分
-
2『100円ショップ』が円安で悲鳴「きついを通り越してどうしたらいいんだって感じ」利益を出すために「もう100円ショップじゃなくなるような…」
MBSニュース / 2024年4月30日 17時45分
-
3今後の為替相場は…“介入でも円安の流れを変えるのは難しい”見方広がる
日テレNEWS NNN / 2024年4月30日 22時15分
-
4メニューたった3種類で急成長「鰻の成瀬」 東京チカラめし、いきなり!ステーキを反面教師にできるか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月29日 6時15分
-
5【速報】「覆面介入」行われていた場合は5兆円規模か 29日に円相場が6円近く「円高」方向に進む 政府・日銀は為替介入の事実明らかにせず
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年4月30日 19時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください