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年110万円以内は非課税のはずだが…愛する孫に毎年100万円の贈与を続けた82歳女性、税務調査で〈多額の追徴課税〉に「何かの間違いでは」【税理士が警告】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月7日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

毎年110万円までの贈与には税金がかかりません。また控除を受けるための手続き等も不要なことから、広く活用されています。しかし、贈与のやり方を間違えると「年110万円以内」でも課税対象とされるケースがあると、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士はいいます。いったいどのようなポイントに注意しなければならないのか、事例からみていきましょう。

夫婦で居酒屋を営んでいたBさんに「税務調査」の連絡が

夫婦で居酒屋を営む個人事業主のAさん(85歳)と妻のBさん(80歳※当時)。地元住民に愛される昔ながらの居酒屋でしたが、数年前にとある作品の舞台となったことでここ数年売上が急増。忙しくも充実した毎日を送っていました。

そんなある日のこと、夫のAさんが心筋梗塞で倒れ、そのまま帰らぬ人に。Bさんは突然のことで大きなショックを受けましたが、なんとか葬儀を済ませました。

常連客の希望もあり、Bさんはなんとか居酒屋を続けようと頑張ってみたものの、夫との思い出が詰まったお店での仕事は非常に辛く、惜しまれつつも畳むことにしたそうです。

Aさんが亡くなってから2年後、Bさんのもとに税務署から連絡がありました。聞くと「相続税の調査に伺いたい」とのこと。Bさんは「最後の数年は居酒屋が好調だったからかしら?」と考えましたが、相続税とお店の勘定は別です。特に心当たりもなく不思議に思っていました。

税務調査官のひと言に愕然としたBさん

税務調査当日、税務調査官は自宅に2名でやってきました。最初はなごやかな雑談からはじまり、居酒屋時代にメディアに取り上げられたことの話などで打ち解け、Bさんは少し安心しました。

午後の調査が始まってすぐ、Bさんはひとりの税務調査官から質問を受けます。

税務調査官「この通帳はなんですか?」

Bさん「ああ、これは孫が成人するときに渡す予定のお金です。はやく孫の喜ぶ顔が見たいわ」

AさんとBさんは15年前、愛する孫の誕生を機に孫名義の口座をつくり、孫が成人する際にサプライズでプレゼントしようと、孫の誕生日に毎年100万円ずつ入金していたのでした。

税務調査官「この通帳の存在、お孫さんはご存じですか?」

Bさん「知っているわけないじゃないですか。サプライズで渡して驚かすつもりなんですから(笑)」

税務調査官「そうですか……。残念ですが、こちらの預金は相続税の課税対象になります」

Bさん「いやいや、なにかの間違いでは? 毎年110万円以内の贈与は非課税ですよね。それくらいさすがの私でも知っていますよ」

税務調査官「それは贈与が成立している場合です。お孫さんが贈与を受けている事実を知らない場合、贈与とは認められません。よって、こちらの口座は名義預金となり、相続税の課税対象となります」

Bさん「えっ、そんな……」

毎年110万円以内でも課税…贈与が「認められない」ケースとは

贈与とは「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる」(民法549条)と定義されています。

つまり、今回のように贈与を受けている側が「その事実を知らない」場合、贈与契約は成立していないとされ、名義預金として税務調査で否認されてしまうのです。

親心として、結婚やマイホームの建築時など、子や孫にまとまったお金が必要なときは援助してあげたいと考える人は多いでしょう。

ただし、贈与を子や孫に知られると「無駄遣いをしてしまうのではないか」「贈与をあてにした生活を送ってしまい、教育上良くないのでないか」と考え、今回のように内緒で積み立てて贈与するケ-スは少なくありません。その結果、今回のような悲劇が起きてしまいます。

毎年110万円以下の贈与が非課税であるという事実は広く知られているところですが、今回のように「名義預金」と判断されてしまった場合、そもそも贈与として認められないため、毎年110万円以下であっても課税されてしまうのです。

「毎年110万円以内の贈与」の注意点

では、生前贈与はどのようなポイントに注意すればよいのでしょうか?

証拠を残す

生前贈与が成立するための要件としては、贈与者が「この財産をあげます」受贈者が「この財産をもらいます」という両者の合意が必要となります。贈与は口頭でも成立しますが、後日、贈与があったことを証明するため、贈与者と受贈者が署名押印した贈与契約書を作成しておきましょう。

また、契約書の作成が面倒な場合は、振込がおすすめです。振込であれば通帳に印字されるなどの証拠が残るため、証拠になります。

通帳は子や孫に管理させる

贈与者が通帳・印鑑を管理していると、受贈者が自分で使えないこととなってしまい、贈与とみなされなくなる可能性があります。

また、あえて110万円を超える贈与を行い、贈与税の申告と納税を済ましている場合から私は大丈夫! とも思わないでください。

申告を行っている場合であっても、今回のようにもらった人が贈与を受けていることを知らないなど、贈与の実態がない場合はやはり否認されることとなります。

さらに、毎年100万円の贈与を毎年同じ時期に同じ金額を10年間行った場合、これは最初から総額1,000万円の贈与をする約束であったのではないか? ただの分割払いではないのか? などと疑われるリスクがあります。

「定期贈与」とみなされると、約束のあった年に総額に対して贈与税が課されるため、注意が必要です。贈与する金額や日付は同じにならないように気をつけましょう。

「孫への贈与方法」にはこんな方法も

一般的な贈与のほか、直系尊属(父母または祖父母)からの贈与であれば、一括で贈与した場合でも非課税枠となる特例があります。この特例を受けるには信託銀行等での手続きなど一定の要件が必要です。

教育資金の一括贈与

直系尊属から30歳未満の子や孫へ教育資金を一括で贈与した場合、最大1,500万円まで非課税となる特例です。

結婚・子育て資金の一括贈与

教育資金の一括贈与と同様に、直系尊属から結婚・子育てにかかる資金を一括贈与した場合、最大1,000万円まで(結婚に関する支払いは300万円まで)非課税となる特例です。

この特例は、受け取る側の年齢が18歳以上50歳未満となります。

税金対策は専門家へ相談したほうが安全

いかがだったでしょうか。毎年110万円以下の非課税枠は広く知られていますが、贈与の実態がない場合、税務調査の際に否認され、追徴税を課される可能性があるため注意が必要です。

また、税制改正により、2024年以降の生前贈与加算は3年から7年に徐々に延びることとなりました。一方で、現行の相続時精算課税制度は、少額でも贈与税額の申告が必要でしたが、令和6年より年間110万円以下の贈与については贈与税の申告が不要となる改正が行わています。

税金対策について調べるとさまざまな情報がでてきます。しかし、理解・認識の甘さから、追徴税を課されてしまうといったトラブルは実際に起こっているのです。税金対策を検討する際は、一度専門家等に相談することをおすすめします。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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