膠着続くドル円相場、先行きは「ドル高」方向か「ドル安」方向か【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月10日 12時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)が解説します。
●ドル円は膠着相場が続いているが、本日発表の3月米CPIの内容次第でレンジを抜ける可能性も。
●米CPIが強い内容なら、ドル円は152円台乗せに、為替介入は効果を高める方法で実施されよう。
●相場の方向性は、介入ではなく経済指標と金融政策の見方次第、ドル円は年末149円を予想。
ドル円は膠着相場が続いているが、本日発表の3月米CPIの内容次第でレンジを抜ける可能性も
ドル円は3月22日以降、1ドル=150円台後半から151円台後半で、膠着が続いています(図表1)。直近で発表された米経済指標は、労働市場や経済活動の底堅さを示唆する内容のものが多く、早期米利下げ観測の後退がドル買い・円売りの材料となっている一方、152円に近づく場面では、政府・日銀によるドル売り・円買い介入に対する警戒が急速に強まり、その結果、膠着相場が形成されるに至っています。
本日4月10日は、米国で3月の消費者物価指数(CPI)が発表されます。市場予想では、前月比0.3%上昇(2月は0.4%上昇)、前年同月比3.4%上昇(同3.2%上昇)となっており、エネルギーと食品を除くコア指数は、前月比0.3%上昇(2月は0.4%上昇)、前年同月比3.7%上昇(同3.8%上昇)となっています。市場予想よりも強い伸びとなれば、ドル円はレンジを上抜け、逆に弱い伸びとなれば、レンジを下抜ける可能性が高まります。
米CPIが強い内容なら、ドル円は152円台乗せに、為替介入は効果を高める方法で実施されよう
弊社はコア指数のうち、物価の瞬間風速を示す前月比の伸び率に注目しています。仮に0.2%程度であれば、物価の伸びは前月からの落ち着きが明確となるため、早期米利下げ期待が高まり、ドル円はドル安・円高に振れることが予想されます。逆に、0.4%に近い数字となれば、ドル円はドル高・円安で反応する公算が大きく、米利下げは7月に開始という弊社の見通しも、修正を検討する必要が出てきます。
CPIが市場予想よりも強い結果となれば、ドル円は152円台に乗せる展開も見込まれ、政府・日銀の為替介入が焦点となります。市場では152円が介入水準との声も聞かれますが、市場で意識されている特定水準での介入は、介入後もその水準を狙った投機的な円売りを誘発しかねません。むしろ、152円台に乗せても、ボラティリティ(図表2)が高まった時点で断続的に介入した方が、市場に水準を特定されず、効果は大きいと思われます。
相場の方向性は、介入ではなく経済指標と金融政策の見方次第、ドル円は年末149円を予想
為替介入は一般に、為替相場が過度に変動した場合、通貨当局が為替レートを安定させるために行うもので、相場のトレンド転換を目的とするものではありません。そのため、為替介入の効果は、相場の過度な変動を一時的に抑制できても、トレンド自体を変えることは難しいと解釈されます。ドル円相場の基本的な方向性は、日米の経済指標(特に物価指標)と、それを受けた金融政策の見方によるところが大きいと考えます。
弊社は、日米とも物価の伸びはこの先緩やかに鈍化し、米国は7月と11月に利下げを実施、日本は年内の利上げは見送りと予想しており、ドル円は年末149円での着地を想定しています。なお、植田総裁は最近、朝日新聞とのインタビューで、物価目標達成の確度が高まれば、追加利上げを検討する考えを表明しています。したがって、米国で利上げが再開され、日本で金融緩和が再開されない限り、大幅なドル高・円安は見込みがたいと思われます。
(2024年4月10日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『膠着続くドル円相場、先行きは「ドル高」方向か「ドル安」方向か【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
外部リンク
- 膠着続くドル円相場、先行きは「ドル高」方向か「ドル安」方向か【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
- 平均賃上げ率「5%超え」だが…「賃金と物価の好循環」実現のための“重要な要素”とは?【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
- 日本株式市場は「上昇する」と予想 ~マーケットの振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】
- 日経平均「あっさり4万円突破」で上昇気流だが…まだ間に合う?日本株投資【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
- 30~50代の5人に1人が「新NISAを始めました!」でも…「新NISAはやめておけ」といわれる7つの理由
この記事に関連するニュース
-
日本株は「軟調な展開」も、上昇すると予想。業績相場に入ることで下値は限られそう ~マーケットの振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月2日 14時25分
-
【ドル円155円超え】今の円安は「悪い円安」?“防衛ライン”突破でも為替介入に至らず【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月25日 13時45分
-
【円安進行】米金融市場、3月CPIを受けて「長期金利上昇・ドル高・株安」へ…今後の展望は?【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月11日 13時15分
-
ドル/円一足飛びに153円台へ。インフレ再燃でFRB今年は「利下げなし」か?
トウシル / 2024年4月11日 10時3分
-
1ドル=152円目前で足踏み、中東情勢緊迫や為替介入警戒がドル上値抑制
トウシル / 2024年4月10日 16時0分
ランキング
-
1Googleの「約束破り」が示す検索市場の"危うさ" ヤフーへの技術提供制限で公取委が初の処分
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 7時20分
-
2米スターバックス、3年ぶりの減収…中東での不買運動や北米の節約志向が重荷
読売新聞 / 2024年5月1日 22時24分
-
3GWの平均予算は「2万7857円」 過ごし方の3位「買い物」、2位「外食に行く」…「海外旅行」は1%
まいどなニュース / 2024年5月2日 7時50分
-
4円下落、一時158円台に迫る 介入観測後も円安止まらず
共同通信 / 2024年5月1日 18時30分
-
5観光業で働く人のためにも「GWは廃止すべき」 こう提言しても、何も変わらなかった理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月1日 6時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください