インドネシア・ジャカルタで働く日本製鉄道車両の勇姿
GOTRIP! / 2017年5月9日 6時30分
日本は世界に冠たる「鉄道大国」でもあります。
その点で言えば、日本はアメリカを完全に超えていると言ってもいいでしょう。これは決して言い過ぎではありません。なぜなら日本は都市電鉄、長距離列車、そして高速鉄道の3種類が各都市で整備されているから。じつはアメリカは、かつてバッファローや原住民を追い払ってまで長距離線路を建設したにも関わらず、現代の鉄道産業は飛行機に押されてすっかり斜陽産業と化しているのです。
我々には、鉄道産業が最も繁栄した国に住んでいるという自覚が求められています。
・進む公共交通網の整備
インドネシアの首都ジャカルタ。近年の経済成長により人口が増加し、都市の再開発事業も進められています。
ですが、それと同時に社会問題も発生しています。そのひとつが渋滞。ピーク時は直線距離で3kmほど進むのにも1時間以上かかってしまいます。少し前にエンジンオイル大手のカストロールが世界の渋滞について調査したのですが、結果ジャカルタが「最も問題が深刻な都市」ということになったほどです。
ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領は、かつて「インドの自動車保有率がドイツと同程度になったら、大変なことが起こる」と発言しました。まさにそれを証明するかのようなことが、インドネシアで発生しています。
あまりに深刻になりすぎた渋滞を解消するため、州政府は公共交通網の整備に全力を注いでいます。その一環として、都市電鉄の延長も行われてはいます。ところが、肝心の車両を生産する能力が現地では不足しているのです。
インドネシアの国営車両製造企業INKA社は、生産キャパシティーが大きい拠点とは言えません。ですから政府はINKA社への投資を国外から受け付けているのですが、一方で都市電鉄の延長は一刻も早く行わなければなりません。
・同一の規格だからこそ
そこで導入されたのが、日本で走っていた中古車両。幸いにも、日本とインドネシアの線路幅は一緒です。
あとは多少の調整を施せば、ジャカルタの街を走らせることができます。現地市民にとって、日本からの中古車両は今や欠かせないものになりました。
日本とインドネシアの地形は、極めてよく似ています。両国とも環太平洋火山帯にある島国ですから、地形の中心部には山脈が走っています。そのため構造が堅牢で、信頼性も抜群という評判があるようです。
こんな話もあります。日本の大学生が、電車の中でスマートフォンを紛失しました。それは座席の隙間に落ちてしまったそうで、彼はその時に気づくことはできませんでした。
ところが、その車両は後日インドネシアに輸出されました。そしてジャカルタの鉄道会社で働く日本びいきの若い整備士が、たまたまそのスマホを発見したのです。この出来事が日本とインドネシアをつなぐ架け橋のひとつに昇華したことは、言うまでもありません。
・活かしてこそのテクノロジー
「ジャカルタの中の日本」は、市内各地に存在します。
我が国日本のテクノロジーに憧れを抱く市民も多く、ジャカルタでは日本関連イベントもたくさん行われています。ですが、技術は誇るものではなく活用するもの。我々日本人が今持っている技術は我々だけの尽力によるものではなく、またそれはひとつのツールにすぎないという側面もあります。どんなに素晴らしいものも、使い道を見出だせなければ意味がありません。
そうした視点に立った時こそ、インドネシアに輸出された中古車両の「真の価値」が見えてくるはずです。
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