デジタル処方せんで医薬品デリバリーを実現、インドネシアの遠隔診療を支えるHalodoc
Techable / 2024年4月21日 8時0分
インドネシアでは2010年代中頃からAndroid OSのスマートフォンが急速に普及。同時に、スマホアプリを介してサービスを提供するスタートアップが続々と登場するようになった。
その代表的存在とも言えるひとつが、Gojekである。インドネシアのバイクタクシー配車をオンライン化し、徹頭徹尾スマホだけで配車できるプラットフォーム「Gojek」を確立したのだ。
バイクタクシーで運ぶのは人に限らない。Gojekは出前や買い物代行、軽輸送、そして処方箋医薬品のデリバリーも行うようになった。この記事ではGojekの医療サービス「GoMed」と提携する、Halodoc社について解説していきたい。
スマホでのビデオ通話で受診Gojekの一機能であるGoMedは、オンライン診療や診察予約、PCR検査予約、処方せん医薬品の配送などを行うもので、遠隔医療サービスを提供するスタートアップHalodoc社と連携している。
Halodocは、患者が実際に病院へ足を運ぶことなくスマホでのビデオ通話で医師の診察を受けられるサービスを展開する。重病ならともかく、風邪や軽い疾患ならばビデオ通話で済ませられることが多い。結果として、病院窓口の混雑解消にもつながっている。
また、医療のデジタル化は処方箋のデジタル化にもつながっている。ここから、オンライン受診で処方された医薬品をGojekのバイクタクシーが患者のもとへ配達するというサービスが生まれたのだ。
公的身分証と組み合わせて確実な本人確認を行えば、薬局に行かずとも必要な薬を手にすることができる。驚くべきことに、インドネシアではこのような仕組みがパンデミック以前からすでに確立されていた。
処方せん提出を徹底させる効果もインドネシア政府は、医薬品購入の際に「必ず医師から処方せんをもらおう」と国民に呼びかけている。これは代金さえ払えれば薬局であらゆる医薬品が買えてしまう現状が背景にある。
日本では薬局やドラッグストアに行っても、処方せん医薬品は文字通り処方せんがなければ購入できない。また、ドラッグストアの場合は薬剤師がいる時間に行かなければやはり購入不可。こうした日本のシステムに慣れている人がインドネシアの薬局に行けば、あまりのカルチャーギャップに驚愕するかもしれない。
上述のとおり公的身分証で本人確認を行い、なおかつ処方箋を紙ではなくデジタルで発行できるようになれば、混んでいない時間帯を狙って薬局へ……などという必要がなくなる。デジタル処方せんは発行直後に薬局の薬剤師へ共有され、処方せん医薬品を配送する態勢が整うからだ。
渋滞都市ジャカルタここで、インドネシアの首都ジャカルタの交通事情についても触れる必要がある。
ジャカルタの渋滞は「世界最悪」とも言われるほどで、平日の通勤ラッシュ時は車で数キロ移動するのに1時間以上かかることも珍しくない。これは、ジャカルタで進められている都市鉄道建設の話題にもつながる。
近年では公共交通機関の整備が進んできたとはいえ、ジャカルタ市民の主な交通手段は今でも車かバイク。このような環境で、体調不良の人が自宅から病院へ足を運べるだろうか。そのうえで窓口で長時間待たされるのだから、本人にとっては拷問に等しい。
そうした背景から、インドネシア都市部ではオンライン医療サービスに大きな需要があるのだ。
そんなHalodocは2023年7月、アストラ・インターナショナル主導のシリーズD投資ラウンドで1億ドルの出資を得ている。
インドネシアのデジタルヘルス分野の成長は、パンデミック以後も衰えを知らない。HalodocとGojekは医療のDX化に大きく貢献し、医療サービスの公平性・透明性の向上をすでに成し遂げている。
もちろんHalodocとGojekだけではない。QRコード決済サービス、オンライン問屋プラットフォーム、スマート養殖システム、小規模農家への融資を目的としたP2Pレンディング。これらのオンラインサービスは、インドネシアではパンデミックの数年前から多くの人が利用している。大学生の独自研究がスタートアップ設立につながり、数年を経てユニコーン企業に成長するということも珍しくなくなった。こうした意味で、インドネシアはすでに日本を凌駕しているという見方もある。
言い換えれば、多くのことをインドネシアのスタートアップから学べるということである。
参照元:
Halodoc
Gojek
(文・澤田 真一)
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