ドイツ人が造った、中世薫るルーマニアの美しき古都・シビウを歩く
GOTRIP! / 2017年8月2日 6時30分
ルーマニア・トランシルヴァニア地方の古都、シビウ。歴史ある教会や赤い瓦屋根の家々が並ぶ旧市街は、今も交通の要衝として栄えた中世の時代のたたずまいを残しています。
この街の歴史は、ハンガリー王の要請を受けてザクセン人(ドイツ)人が入植してきた12世紀にさかのぼり、ドイツ名を「Hermannstadt」といいます。
ザクセン人は、それまでは農業中心であったこの地に商工業を持ち込み、シビウをはじめ、クルージ・ナポカやブラショフといったトランシルヴァニアの都市を発展させました。
15世紀、シビウは多くの商人を惹きつけ、商業都市として発展。19世紀にはこの地方の中心地となり、現在も残る美しい街並みが完成しました。
シビウの旧市街の中心地が、丘の上にある大広場。
12世紀にザクセン人が街の建設を始めた当時からの中心地で、広場は15世紀の商家や、18世紀のバロック教会、ゴシック様式の館など、壮麗な建物の数々に囲まれています。
大広場の西側にある「ブンケンタール博物館」は、ルーマニア最古の博物館。館内では、かつてオーストリア帝国のトランシルヴァニア総督であったサミュエル・ブンケンタール男爵のプライベートコレクションなどを見ることができます。
広場の北に建つ時計塔は、シビウが商業都市として最盛期を迎えた1588年に建てられたもので、街のシンボル的存在となっています。
塔にはのぼることができるので、ぜひ塔の上から、深い緑に守られ、今も中世の面影を残すシビウの美しい街並みを堪能してください。
大広場から時計塔をくぐると、小広場へとつながっています。広場を囲むようにレストランが並んでいて、大広場に比べると気取らない下町的な雰囲気になんだかほっとします。
小広場にはアクセサリーや木工製品などの土産物を売る露店が並んでいて、珍しい品々を眺めながら歩くだけでもワクワクします。
小広場の奥には、1859年に造られたルーマニア初の鉄橋、「うそつき橋」と呼ばれる有名な橋があります。なんと、この橋の上でうそをつくと橋が崩れてしまうという言い伝えが。
ところが、「うそつき橋」という名前は、もともとドイツ語で「Liegebrücke(横たえる橋)」と呼ばれていたものが、「Lügebrücke(嘘の橋)」に転じたものなのだそうです。それでも、この橋の上でうそをつくことはなんとなくはばかられますね。
小広場に隣接するシビウを代表する建築物のひとつが、福音教会。1300年から1520年にかけてザクセン人が建てたゴシック様式の教会で、端正な尖塔と、ギザギザのシルエットが印象的な壮大な建物です。
地上からでは一部しか見ることができませんが、屋根の模様も独特。時計塔にのぼったときにぜひ確かめてみてください。
石造りの教会内部はどっしりとした迫力をもってせまってくるかのようです。派手さはありませんが、力強さと繊細さが同居した天井のヴォールトや、壁面に施された緻密な彫刻装飾が印象的。
6002本もの管をもつという、豪華な装飾とミステリアスな色使いのパイプオルガンも圧巻です。
何をするでもなく、ただぶらぶら歩くだけでも楽しいのがシビウの街。坂の多い街並みには、絵になる風景がたくさん待っています。
なかでも見逃せないのが、小広場から階段を降りたところから見える、旧市街の風景。
この周辺の路地は人通りも少なく、福音教会を中心にして城塞のように広がる街並みを見ていると、中世の世界に迷い込んだかのような気分が味わえます。
大広場から延びる路地を散策するのもおすすめ。大広場から南東にまっすぐ進んでいくと、15世紀から16世紀にかけてオスマン朝の侵攻を防ぐために築かれた城壁にぶつかります。
メインストリートから少し離れただけで、閑静な通りにしっとりと薫り立つ古都の情緒。この街は、こぢんまりとしていながら驚くほどに多彩な表情を見せてくれます。
華やかさと素朴さが混じりあったシビウの街は、その優しい空気で訪れる人々の心を癒してくれるのです。
Post: GoTrip! http://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
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