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世界遺産登録から4年 なのに知られていない!? 函館の縄文遺跡の魅力と課題 「縄文レストラン」って何だ?

HTB北海道ニュース / 2025年1月10日 19時32分

(c)HTB

函館市中心部から車でおよそ1時間。

前田愛奈記者:「ここが大船遺跡です。竪穴住居がいくつか並んでいます。目の前にある住居の跡はすごく大きいです」。

南茅部地区にある大船遺跡。今からおよそ5500年前、縄文時代中期の集落の跡です。100棟を超える建物の跡が残っていて、このうち6つの住居が復元されています。

2021年7月、世界遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」。17の遺跡から構成されていて、このうち6カ所が北海道にあります。函館市内には、「大船遺跡」と「垣ノ島遺跡」の2カ所。北海道唯一の世界文化遺産です。ただ、問題なのは、その知名度。

記者:「函館に世界遺産があることを、知っていますか?」

観光客:「知らなかった、知ってた?」「知らない」「五稜郭?違う?」「世界遺産か、分からないな」。

函館の世界遺産は、なぜ知られていないのか。その魅力と課題とは。

前田記者:「お邪魔します。思ったより広いですね」。

大船遺跡の竪穴住居。ガイドを頼めば、中に入ることもできます。見学は無料です。ここに、4人から6人の家族が生活していたと考えられています。

前田記者:「4、5人が寝るスペースって?」。

大船遺跡ガイド・大宮トシ子さん:「縄文時代の人たちは、今みたいに足を延ばして寝ずに、横になって膝を曲げた状態で寝ていたんじゃないかって」。

前田記者:「こうやって寝ていたってことですか?」

住居の中には3つの穴が。1つ目は祭壇の跡。2つ目は囲炉裏の跡。そして3つ目の穴はというと…。

大宮さん:「土の成分を分析した結果、人の胎盤にしか含まれていない成分が見つかっているんですね。生まれてきた子どもの健康を願うということで、ここに埋めて土をかぶせて、大事に守っていたというふうに考えられています」。

住居の外に植えられているクリの木。縄文人を知る上で重要なヒントが隠されていました。

大宮さん:「元々、北海道にはクリの木が自生していなかった。本州の方から持ち込まれてきたものを植樹して、実は食料として、木は材料として使われていたということが分かっています」。

前田記者:「うっすらと青森県、本州が見えています。縄文時代の人たちは、この大きな津軽海峡を船で渡っていたんです」。

「縄文人は海を渡っていた」。その証拠が、函館市縄文文化交流センターにあります。

前田記者:「かわいい!サメ?」

函館市縄文文化交流センター学芸員・前田正憲さん:「いやいや、シャチです」。

前田記者:「すごく精巧に作られていますね」。

この「シャチ」を発掘した、学芸員の前田正憲さんに案内してもらいました。「大珠」と呼ばれるヒスイの首飾り。ヒスイの産地・新潟県糸魚川市から持ち込まれたと、考えられています。

学芸員・前田さん:「ヒスイを持ってきた人は、この地方の何が欲しくて持ってきたのかということです。ここ(南茅部地区)の産物と言えば?」。

前田記者:「コンブ?」。

学芸員・前田さん:「ですね」。

館内には、他にも本州との行き来を示す漆塗りの土器などが数多く展示されています。そして、この施設の目玉も。

国宝・中空土偶。「南茅部」で発見された「中空土偶」ということで、愛称は「茅空(カックウ)」。中が空洞の土偶としては、国内最大です。顔の特徴から、「茅空」も東北から渡ってきたと考えられています。

学芸員・前田さん:「本当は時々少し動くんですよ」。

前田記者:「えっ、嘘!?」

学芸員・前田さん:「冗談です。右足が少しだけ前に出ているんですね」。

前田記者:「あ、本当だ。ちょっと前に出ている。本当に動き出しそう」。

博物館のすぐ裏に広がるのは、「垣ノ島遺跡」。ここでは、縄文人の精神性に触れることができます。

垣ノ島遺跡ガイド・濱田鉄也さん:「長さが190mで、幅が120m。高低差が2m以上で国内最大規模の盛り土遺構になります」。

横から見ると、少し盛り上がった部分が。ここから、膨大な量の貝殻や動物の骨、土器などが出土しています。

濱田さん:「捨て場というよりは、感謝をして(自然に)お返しする。魂の送り場、自然との対話を行う祭祀場という位置づけなんですね」。

食べ物や日用品を埋めて造られた、コの字型の盛り土遺構。中央部分では、宗教的な儀式が行われていたとみられ、そこに向かって真っすぐ南北に延びる道も造られていました。

濱田さん:「縄文人は食材にしろ、道具の材料にしろ、全て自然の恵みによって生かされている。もしかすると縄文人は我々に対するメッセージとして、考えさせるメッセージとして、この巨大な物を残したのかもしれないなと思うとロマンを感じますね」。

ただ、縄文遺跡を訪れる人の数は、伸び悩んでいます。国宝・中空土偶が展示されている函館市縄文文化交流センターの来訪者数は、世界遺産に登録された翌年をピークに減少傾向です。

「縄文遺跡のある南茅部の魅力を、もっと知ってほしい」。

先月、地元の人たちが、新な企画をスタートさせました。竪穴住居を模したテントの中で料理を提供する「縄文レストラン」です。秋のオープンを目指し、この日は試食会が開かれました。鹿の筋肉を煮込んで作ったコンソメスープやタラの胆のパテなど、「食材を無駄なく余すことなく使う」という縄文人の考えをもとに、イタリアンのシェフが腕を振るいました。

シェフ:「当時の方の考えを学んで、なるべ肝とか胃袋もそうですけれど全部捨てずに、なるべく使って詰め込んでます」。

縄文時代の研究者:「とてもおいしいです。縄文の人たちが自然に感謝していたという気持ちに戻ることが大切なんだろうと思います」。

台湾からの男性:「初体験です。なんか面白くて『自分が縄文人かな』と想像しました」。

函館市の南茅部地区には、縄文文化を支えた豊かな自然が残っています。世界遺産を守り、地域の魅力をどう伝えていくのか?今の時代に生きる私たちが、考えなければなりません。

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