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「ロジカルシンキングは誰でも身につけられる」って本当?/柳田 善弘

INSIGHT NOW! / 2015年7月17日 10時24分

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柳田 善弘 / 株式会社エデュテイメントプラネット

ロジカルシンキングは本当に誰でも身につけられるものですか?

小さいながらも会社経営に携わり、また組織の人材育成に関わる仕事に携わっている私としては、以前から気になることがありました。

それは、研修事業者の営業担当、そして講師が、「ロジカルシンキングは誰でも身につけられる」ということです。

この記事を読んでいるみなさん、特に組織で人材育成に関わる仕事をしているみなさんの実感として、この言葉は真実でしょうか。

率直に言って、私はかなり懐疑的なのですが、一番の問題だと思うのは、「(この研修を受ければ)誰でも身につけられる」という思考が、「これでダメならあなたが悪い」という結論、諦め、思考停止を生んでしまわないか、ということです。


ロジカルシンキングはコミュニケーションツール

仲の良い友だちならばともかく、ともにビジネスで成果をめざすメンバーとしては、論理的に思考できるか否かは非常に重要なポイントになります。

もちろん、理念を含めた価値観の共有、業務遂行のための自立や互助に関する能力が重要なのは言うまでもありませんが、本稿ではロジカルシンキングに絞って話を進めます。

ロジカルシンキングは、個人としての思考ツールだけでなく、他者とのコミュニケーションツールでもあります。論理的な会話が成立するということは、早くて正確な意思疎通がしやすいということですから、ロジカルシンキングが組織で働く際に非常に有用であることに異論を持つ人は少ないでしょう。

ロジカルシンキングがそこまで重視されないシーンとしては、特別なスキルや権限を持ったマネージャーもしくはメンバーがいる、あうんの呼吸でコミュニケーションが取れる、文脈が限定的で考える余地が少ない、といったものでしょうか。


コミュニケーションは「どう伝えるのか」の前に「何を伝えるのか」が重要

頭の中でなされる思考そのものは見えません。
思考は話し言葉や文書や図解等で表現されることで、他者は認識できます。

そこで、プレゼンテーションやら文書作成やらといったスキルに目がいきがちですが、何を言っているのか分からない人の話をよくよく聞くと、その人自身も伝えたいことが不明確であるケースがあります。

対話の中で主張が明確になっていくケースが多くありますが、発信している時点では不明確なのです。
「何を言っているのか分かりづらい」「情報量は多いが中身がない」と感じる場合、『伝え方』ではなく、『主張そのもの』が曖昧であったり、論理が飛躍していることが原因である場合もあるのです。

ロジカルプレゼンテーションもロジカルライティングも、言葉としてはキャッチーですが、あくまでロジカルシンキングの表現方法でしかありません。


ロジカルシンキングとは何か

ロジカルシンキング(論理的思考)については多くの先人がそれぞれの主張をしています。
当方は、ロジカルシンキングとは 『対象をその脈絡や構造から合理的に把握しようとする思考様式』 と考えています。

脈絡とは、一貫した道筋・話の流れのことです。脈絡による思考方法には演繹法と帰納法があります。
構造とは、各要素の組み合わせ・相互関係からなる総体のことです。構造による思考方法にはプロセス、マトリックス等が使えます。

哲学的な思索と異なり、ビジネスにおけるロジカルシンキングは、意志決定に資するものであり、また効率的である必要もあることから、目的意識、仮説思考、ゼロベース思考なども必要になりますが、内容としては非常にシンプルなものです。

この原理原則を理解もしくは確認するために、多くの個人や組織が多くの時間とエネルギーを注いでいるケースが多くあります。


ロジカルシンキングをものにするための2つの方法

ロジカルシンキングそのものは、目新しい技術ではなく、人によっては無意識に行っている思考方法であり、「原理原則を理解・確認」するだけで、習得することができると考えています。

その一方、書籍を読んでも研修に参加してもロジカルシンキングが苦手な人が多くいるのも事実です。

その対応方法として、個人的には「型を覚えてしまう」ことが有効だと考えています。

本質的に理解できることに越したことはありませんし、詰め込み型の悪しき勉強方法だと言う人もいるかもしれませんが、人生は長く、仕事はその一部です。ロジカルシンキングの習得方法くらいでそこまで深く考えず、一歩前に進む方が有効な場合もあるのではないでしょうか。


ロジカルシンキング的思考法とは

本質的にロジカルシンキングをしているわけではないけれど、ロジカルシンキングをした場合とほぼ同じ効果を見込める思考法を、ここではロジカルシンキング的思考法としましょう。

「営業担当が売上をあげるための方法を考える」場合を例に、具体的にご説明します。

まず、売上の構造を覚えます。考えるのではありません。

以下の構造(切り口)はあくまで例です。ご自身の現場における有効な売上構造は、ロジカルシンキングができる人を含めてディスカッションをして明文化、パターン化、フレームワーク化していくことが有効です。

  • (客数)売上=客単価×客数
  • (客種)売上=A属性客売上+B属性客売上+C属性客売上…
  • (人員①)売上=営業担当一人あたり売上×営業担当数
  • (人員②)売上=A営業担当売上+B営業担当売上+C営業担当売上… ※
  • (確率)売上=単価×リード数×商談率×見積率×成約率
  • (シェア)売上=市場×シェア ※
  • (商品)売上=新商品売上+既存商品売上
  • (比率)売上=昨年度売上×成長率

※属性・市場の定義も重要
BtoB:新規/既存、業種・業界、売上規模、地域等
BtoC:新規/既存、性別、年齢、家族構成、所得、趣向、地域等

パターン化されている売上の構造を眺めつつ、売上をあげるために何ができるのか、実現可能性と売上への影響をもとに検討します。

可能ならばご自身の仮説をもとに、ロジカルシンキングができる人とのディスカッションをすることで、精度を高めていきましょう。そうすることで本質的なロジカルシンキングの習得は難しくとも、その感性は磨くことができると私は考えています。

上記は売上に関するものですが、例えば日々の報連相においても、「事実と私見を分ける」「5W1Hを明確にする」等の構造を意識するだけでも、コミュニケーションとしての精度はあがります。

勘違いしていただきたくないのは、「型」の習得はマニュアル化と近しいですが、めざすゴールが違います。

マニュアル化のゴールは、前提条件をクリアした人ならば誰でも、一定の成果を生み出すことにあります。
一方、「型」の習得のゴールは、多くの適切な型に触れることで感性を磨き、ロジカルシンキング的な思考ができるようになることです。


ロジカルシンキング的思考法のポイント

本稿のまとめです。

「ロジカルシンキングは誰にでも習得できます」というフレーズには個人的に疑問が残ります。

ロジカルシンキングが苦手な方は、ロジカルシンキング的思考法を用いることで、ご自身の担当業務という限定されたシーンならば、成果を生むことができると考えられます。

ロジカルシンキング的思考法には、以下の3つが有効です。

  1. ロジカルシンキングができる人に相談する
  2. 型を入手・更新し続ける
  3. 有効な型を覚える

全ての型を覚えることは難しいでしょうから、使えるように保管しておくのもよいでしょう。
その際、できれば活用方法や有効性も含めて記録しておくと、型の習得が早くなります。

ロジカルシンキングが苦手な場合、セルフチェックも難しいケースが多いので、ロジカルシンキングができる人に相談するのは非常に有効です。

長々とお付き合いいただきましたが、みなさんのスキルアップや人材育成業務のご参考になれば幸いです。

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