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大学以前に社会勉強が大切/純丘曜彰 教授博士

INSIGHT NOW! / 2016年2月11日 6時0分

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純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学

 日本の大学は、ガキばっか。いや、実際、年齢的にそうなのだ。日本の新入学生の8割以上が19歳以下。しかし、ドイツの大学では、20歳以下は2割しかいない。まして大半が最短の4年22歳で卒業するなんて、世界的にも日本は異様。日本の大学生はガキすぎて、海外では「大学生」としては扱われない。なんでこんなことになってしまったかというと、明治にエリート促成の都合でできた旧制高校(たとえば駒場)が、戦後、教養部として大学の方に取り込まれてしまったから。また、一般青年についても、戦後日本に徴兵制が無く、高卒、兵役、大学、というキャリア・ステップが短絡してしまったから。


 一方、ヨーロッパの大学は、オッサンや姉御だらけ。それどころか、キャンパスにベビーカーがゴロゴロしていて、そこらで子供の声が聞こえる。授業料不要の国も多く、高校を出たら働き、数年分の生活費を確保して、大卒の資格を取って管理者として再就職する。さらにもう一度、大学に戻って博士号を取り、経営者になる。企業に年功序列の社内昇進という習慣が無く、だらだらと同じところで労働者として働いていることに意味が無く、辞めて大学に戻ってこそ、管理者や経営者への昇格切符を得ることができる。


 日本のガキ大学は、とくに女性で問題だ。男女平等はけっこうだが、結局は日本男性の従来のライフサイクルを女性もなぞらさせられているだけ。現実には、案内や応対など、むしろ若い女性の方が好まれる仕事も少なくない。にもかかわらず、このもっとも社会的に求められている人生の時期を、バイト学生として、学業も、仕事も、どちらも中途半端のまま、無駄に過ごしてしまう。その一方、卒業後は、社内昇進の人事制度のせいでキャリアを途切れさせないことが第一とされ、結婚は遅れ、妊娠出産しても休めず、子供が小さいうちから保育園に預けっぱなしで共働きをずっと続けないといけない。


 だったら、ヨーロッパのように、高校を出たら、まずは女性としての若い元気をウリに外で働き、そのうちに縁を得て、出産を終え、子供が幼稚園に入るころに大学へ行って、子供が小学生になって留守番ができるくらいになってから、大卒として共働きをして、住宅資金や教育費などの生活基盤を向上する、という方が無理がないのではないか。


 男性も同じで、いまの企業の大卒新入社員の仕事など、大卒でなければできないような専門性のある作業じゃない。それに無駄に大卒の給与を払う意味があるのだろうか。一方、ずっとガラパゴな国内企業としてやっていけるのならともかく、海外の組織や企業と交渉しようとすれば、政治家でも、経営者でも、いまどき博士号を持っていない、などというのは、学歴的に大いに見劣りがする。それで、いまや官庁や大手では、幹部候補を海外の大学院に送り込んで、学位取得を促している。そうでなくても、会社を辞めて、海外の大学院に自力で入り、人脈を得て、日本の企業の経営者になる、という人はもはや珍しくない。だったら、最初から作業要員として高卒を大量に採用し、自力で大学に戻って学士や博士を取ってくるやつを管理者や経営者に再雇用する方が内部教育コストも安く済む。


 そもそも大学でも、数学や理論物理学はともかく、工学や経営学、法学や政治学など、実社会の経験も無しに、本の上だけで勉強して、ガキにわかるものだろうか。いや、教育学や人文学でも、学校から出たことのない、人間と人生の機微もわからぬやつに、専門の研究だの、後進の指導だの、できるものなのだろうか。実際、自分にしても、大学院とテレビ局の掛け持ちで、社会の現場の諸先輩から教わったことは、あまりに多く大きかった。あの経験があったからこそ、いまの自分があり、また学生にも、ただ先人の学説を伝えるのではなく、自分の言葉で教えることができている。


 いまの日本の高卒即進学というのは、いったい、だれのための制度なのか。少子化で潰れそうな大学のためか? 若者たちの人生、この国の将来を考えるなら、一時的に大学進学率を下げても、実社会の経験の大切さこそを先に教えた方がいいのではないか。どうせ全入なら、センター入試(高卒資格試験)などより社会人入試を強化して、学生の多様性と即戦力を確保した方が大学そのものも強くなり、そのプレステージが確保されてこそ、大卒としての再就職を促進することができるのではないか。


 「成人」を18歳に引き下げるなんていう話もあるようだが、勉強なんて自分のためのもの。18歳にもなって親がかりで学費も、生活費も、遊興費さえもぜんぶ出してもらって、のらりくらりと4年間も人生を無駄にするくらいなら、まず自分で働いて稼げよ。その大変さに、もう嫌だ、もっと上をめざしたい、もっと広い世界を知りたい、と思ってから、大学においでよ。どんな有名大学の一流教授の講義も、本人自身の向上心が無ければ、けっして身にはつかない。生きていくために、働くために、勉強するんだ、という根本が抜け落ちていては、すべてが無駄。大学以前に、生きること、働くことを社会で学んでいてこそ、大学の勉強が君を大きく伸ばす。


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『悪魔は涙を流さない:カトリックマフィアvsフリーメイソン 洗礼者聖ヨハネの知恵とナポレオンの財宝を組み込んだパーマネントトラヴェラーファンド「英雄」運用報告書』などがある。)

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