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シリーズ:マーケティングなんてカンタンだ!・間違いがちなフレームワークを総点検【第3回】5F(5つの力)分析/金森 努

INSIGHT NOW! / 2016年2月24日 7時0分

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金森 努 / 有限会社金森マーケティング事務所

5F分析はマイケル・ポーターが考案した代表的なフレームワークの一つ。正しい名前はFive forces analysis(5つの力分析)という。かなりざっくりした分析ではあるが、上手く使えば様々な視点と示唆が得られるフレームワークだと筆者は考えている。

【目的】
(比較的マクロな視点で)自社の属している、もしくは進出を考えている業界を5つの要素に切り分けて各々の影響力を明らかにし、当該が業界の状況を明らかにすること。

【ゴール】
自社の利益を奪う影響要因を見つけ出して生き残る対処法を検討する、もしくは自社の優位性が発揮できる新たな業界の切り口を見つけ出すこと。

【基本構造】
5つの力とは、「業界内の競争」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」。尚、「売り手」とは業界に対する売り手なので、別の言い方をすれば「調達先」だ。「買い手」は業界が提供するものの買い手なので、別の言い方をすれば「顧客」である。言葉のイメージ的に逆に考えがちなので、注意すべきポイントである。
5つの力各々の要素を記入したら、それらが「業界」に与えてくる影響力を大・中・小という大まかなレベルの矢印として記入して、全体として大や中が多ければ「厳しい(利益が出ない)業界」、主に小、一部中ぐらいであれば「厳しくない(利益の出る)業界」であると判断する。

【使いこなしのキモ】

1. まずは「業界定義」を明確にする!
まずは自分達が属している業界が「何業界なのか」を明確に定義する。定義の仕方次第でまずは業界の広さと競合が変わってくる。例えば「金融業界」という大きな定義なら、「業界内の競合」は様々な企業が競合となる。例えば「銀行業界」「地銀業界」など狭めていくなら競合は減る。ここをいい加減に定義して分析を始めると可なら混乱するので最初にフレームとして明記することだ。

2. どこかに働きかけたら「反作用」も忘れないこと!
大きな力が働いているところからは、自社の利益が流出していることを表している。その力の大きさを変えるには、1と2で述べたように「業界定義を変える」ことが考えられる。しかし、その場合、2の例で単なる「飲料業界」から「特保飲料業界」に変えると、代替品としてダイエット食品が登場したように、新たに脅威となる要素が登場する場合がある。
また、大きな力の働いているところに直接働きかける(力を小さくする)ことも考えられるが、それに成功したとしてもその影響で別の力が大きくなることもあるので安心しないことが肝要である。

3.業界定義は工夫し尽くす!
例えば自分が「ペットボトル飲料」の担当だったとしよう。単なる「ペットボトル」で戦うなら競合がゴッソリあることになる。その飲料が「特保」の認定を取っているなら、「特保飲料業界」になり、競合はかなり減る。(但し、前述の通り代替品としてダイエット食品などが登場する)。特保飲料はいくつかタイプがあるが、代表的なものは花王「ヘルシア緑茶」、サントリー「特茶」のような脂肪燃焼系と、サントリーの「黒烏龍茶」のような食事と一緒に摂取して脂分を体外に放出する系がある。別の切り口では、その特保飲料が炭酸だったりすると、「炭酸特保飲料業界」ということになり、競合が花王の「ヘルシアスパークリング」とキリンの「メッツコーラ」ぐらいになる。このようにできるだけ競合が少ない業界を見つける、またはいない業界を作り出すことが工夫のしどころだ。(但し、それが顧客=買い手にとって意味のある切り口であることが必須)。
このように5F分析においては、業界を定義どのように定義するかが大きな勝負のキモなのだが、実はこの部分が忘れられがちだったり、工夫がされてなかったりすることが多いのだ。

4.「顧客は誰か?」を考えて、「5つ」という数字に縛られないこと!
フレームワーク上級者の原則は「使いこなしにおいて改良・改造は自由にして可」とい
うことだ。この5つの力の「買い手」を顧客として捉えるなら、業態やビジネスモデルによってかなり異なる要素が混在することになる。直販をしている業界なら、買い手は素直にエンドユーザー=消費者だ。だが、多くのメーカーなら間に流通が入る。メーカーにとっては、第一の顧客は流通であり、いくら消費者ニーズを捉えたにウケそうな商品を作っても、流通が棚に並べてくれなければ消費者が手に取ることはできない。
その場合、流通のニーズや意向を明確にするなら、「5つの力」ではなく買い手を2つに分けて「6つの力」で考えた方がいい。
もっと極端な例でいうなら、例えばビールメーカーなどは流通→消費者という買い手の要素と平行して、料飲店も重要な顧客だ。料飲店において消費者はその店のビールの銘柄(メーカー)を選択の余地なしに無条件で飲むので、消費者に対する打ち手はほぼ無意味だ。そのため、例えばビールメーカーが流通→消費者というラインとは別に料飲店の影響力を小さくするために行っている施策として、比較的大手のチェーンには資本注入して自社ブランドのビールだけを置かせて固定化するという施策を取っていたりする。この場合、買い手が3つに分割されて「7つの力」で考えられていることになる。

フレームワークをもっと上手く使いこなすためには、単に枠にはめて情報整理するに留まらず、徹底的に「何が言えるのか」「ではどうするのか?」を考えることだ。もう一つは、自社の課題に合わせてフレームワーク自体を改造して、課題解決が明確に見えてくるようにすることである。「フレームを使っても、フレームに縛られないことが大事!」なのである。

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