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経営戦略(左袒布略)編【第一回】先ず信より始めよ。信なくんば立たず/小笠原 昭治

INSIGHT NOW! / 2016年5月4日 8時0分

写真

小笠原 昭治 / インターアクティブ・マーケティング

1.マーケティングで最も重要なのは「顧客」というバイアス

There is only one valid definition of a business purpose: to create a customer.

訳「ビジネスの目的で有効な定義は一つ:顧客を作ることである」

というドラッガー教授の名言は、

「古い」

といったら叱られるでしょうか(笑)

どうして古いのか、その理由は、追々、シリーズで詳らかになっていきますが、

コトラー教授の“R-STP”にしても、レビット教授の“顧客情報”にしても、顧客のみ焦点を当て、顧客を最重視しています。

が!

仕事柄、いろいろな経営者に会って、いろいろな意見を聞いてみると、

1)当社で大切なのは、顧客ではない、○○(たとえば、技術)である

2)当社で大切なのは、商品ではない、○○(たとえば、仕入れ先)である

3)当社で大切なのは、売り方ではない、○○(たとえば、在庫)である

という経営者が意外と多い事実に驚かされます。どういうことかというと、

1)の、たとえば技術

技術に顧客はついてくるという考え方です。

確かに、メーカーは、技術(や生産財)を優先しがちで、

特にBtoBは、技術(か生産財)がなければ、製品も顧客もありません。それは理解できます。

しかし、技術の○産を標榜してきた自動車メーカーの、その後の行き詰まりと、復活の軌跡を、30代以上なら、ご存じなハズ。

2)の、たとえば仕入れ先

良いものを、安く仕入れて売るには、仕入れ先が重要で、

生鮮食料品のように、安くて良いものならば、顧客は、黙っていても、ついてくるという考え方です。

確かに、お客さんは、安くて良いものを求めます。それに応えるには、仕入れが重要。

これも、よく理解できます。

はたまた、業界によっては、仕入れ先(主にメーカー)が、業界全体の主導権を握っていて、

メーカーの機嫌を損ねたら、小売店の売り物が無くなってしまう業界や、

へたに動けば、業界に潰されてしまう。そんな業界は結構あります。

仕入れ先は、時に、社の命運を握るくらい重要なのも理解できます。

3)の、たとえば在庫

これは、小売店ならば、お分かりになるでしょう。

棚から商品が消えては商売になりませんので、

店舗以上に広いバックヤードを確保している小売店は珍しくありません。

商品あっての顧客という考え方。これも、よく理解できます。

これこの通り、マーケティングで重要な

  • 顧客
  • 商品
  • 売り方

は、実際の経営では、さほど、重要ではなく(驚!)

顧客よりも大切なもの(技術や仕入れ先)が、経営価値になっている現実。

これでは、顧客優先のマーケティングが浸透しないのも頷けます。それを、

「いいや!マーケティングってのは、こういうモンなんだ!4P'sだ!CSだ!」

と、マーケティングの解釈を絶対的に決め込んで微動だにしないのも自由とはいえ、

メーカーや、大企業には通じるとしても、その他の圧倒的多数(99.7%)を占める中小企業、

とりわけ、87%を占める小企業には通じにくいのが現実です。

そりゃそうですよね。大量生産(するメーカー)向きのマーケティングですから、非メーカーや中小企業が学ぼうとすれば、クロスセルやら、USPやら、せいぜい、売り方を学ぶのみ。

これが、マーケティング = プロモーションのように誤解されがちな土壌になっています。

2.分析するより先に調べるのがマーケティング

現に、マーケティングのプロセスというと、

「ナントカ分析から始める」

という訓えに、よく遭遇します。分析から始めるのが定説になっているといっていいでしょう。

でもね、素材がなくちゃ調理できないように、分析から始められるのは、素材にあたる調査を外注できる企業であって、

中小企業、特に小企業が、何十万円、何百万円するリサーチを、そうそう気軽に外注できるワケありません。

余談ですが、あるTV番組で、ある会計事務所のスタッフたちが、クライアントの売上を伸ばそうと、SWOT分析を使って、打ち合わせていました。

しかーし!優秀な頭脳をナンボ突き合わせても、Strength(強み)が見つからない。

そうりゃそうで、調べもせずに、穴があくほどSWOTのフレームを見つめたって、強みは見つかりません。

まず、調べなくちゃ。

調べる予算がなければ、自分の足で動き、目で見て、耳で聞なかければ。

なので、調査が先です。よく「調査分析」と一緒くたにされがちですが、調査と分析は別です。

分析から始められるのは、調査を外注できる(予算のある)企業の話であって、

予算がなければ、自分で調べるところから始めるのが(そのやり方まで踏み込むのが)、中小企業にも通じるマーケティングでしょう。PESTやらPPMやら、

フレームワークを学ぶのは結構ですが、使う前に、まず動く

こと。それが、調査を外注する予算のない企業のマーケティングです。

余談が続きます。

その昔、マーケティングの実務を請け負っていた頃は、企業のマーケティング部や、広告代理店がクライアントでしたので、

マーケティングの現場は、イヤというほど経験させてもらいましたが(本当に、もう結構です:笑)

コンサルティングに傾注してからは、経営者と話す機会が多くなり、いろいろな経営者から、いろいろなことを学び取りました。

その最たるものが(大学で教える大企業向けの経営戦略ではなく)、企業全体の99.7%を占める中小企業の、現地現場の経営戦略です。

経営戦略の定義は百家争鳴なれど、

経営資源のヒト・モノ・カネを動かして、会社を維持する経営陣の作戦

が(筆者による)経営戦略の定義で、口語調にすれば、

「私たち経営者は、銀行から一億円を借りてきてでも、会社を潰さない。

君たち従業員は、商品を売って、利益を増やしてくれ。

借りるか、稼ぐかして、資金さえあれば、会社は存続していける

ということです。経営戦略は、ヒトモノカネ。とりわけ、カネ(資金)が第一。

(さらに詳しくはブログに)

http://0gasawara.blogspot.jp/2015/04/keieiishiki.h...

なので、お客さんよりも、株主や銀行を優先する経営者がいるわけで、

企業は営利追求団体ですから、お金を目当てに経営するのは当然として、問題は、

  1. だから、金儲けに走れ(商品を売れ)と命じる経営者なのか?
  2. だから、顧客を増やせ(社会の支持を集めろ)と命じる経営者なのか?
  3. だから、……

どういう思想を示すのか?ということです。経営者として。

3.だから顧客を増やせと命じる経営者ですか?

2)の、だから顧客を増やせ(社会の支持を集めろ)

の意味は、こちらのサイトが代弁してくれています。引用しますと、

http://tinyurl.com/mveqzta

「現在生き残っている会社の多くが、社会の問題を解決している企業ではないだろうか?その会社がないと社会が困るような会社だ」

このように、顧客、ひいては、社会から利益を受け取るのが企業ですので、

社会、つまり、顧客の支持を集めることで、利益も企業に集まります。

おもしろいですねえ、社会と会社。どちらも「社」と「会」の二文字です。

和訳の偶然とはいえ、それだけ、切っても切り離せない存在であることを黙示しているのかも。

余談ですが、クレームや要望が正しいかどうかの判断は、ミクロな顧客の立場よりも、マクロな社会の立場で判断します。

ある顧客にとって正しくても、それが社会悪であれば、(店員に土下座させる等)間違っていますので、

顧客も、企業も、社会の一員として、間違ったクレームや要望には、明に暗に間違っていると指摘して然るべきでしょう。

顧客へ、臣下の礼をとる必要ありません。顧客も、企業も、社会の一員として同等であることは確か。

わかり易く言うと、社会悪を突きつける顧客なぞ、社会人(商売の対象)ではありませんし、

天網恢恢疎にして漏らさずで、社会悪を容認し、それを部下へ強いる経営者は、いずれ、鉄槌を喰らうでしょう。耐震偽装事件のように。

巻き添えにならないよう、早いうちに、遠ざかっておくことです。

4.だから金儲けに走れと命じる経営者ですか?

1)の、だから金儲けに走れ(商品を売れ)

の経営者における下達は、

経営者「売上を増やせ」

営業部長「商品を売ってこい」

営業社員「買って下さい」

と、商品を売る営業戦略へ垂直落下します。

(さらにブログに詳しく)

http://0gasawara.blogspot.jp/2015/01/ka.html

その営業戦略が、顧客のタメになる戦略ならば良いのですが、

顧客の得よりも、売上(お金)のために売ろうとすると、

営業マンの意識は、値札の付いた商品に集中し、お客さんの得(ベネフィット)を見誤ってしまいます。

お客さんは、自分の得にならないものなど買いませんので、当然、売れません。

それでも売れている(売れてきた)のは、

  1. お客さん自ら価値を見出して買ってきたか
  2. 企業努力で、売れる商品を作ってきたか
  3. 営業努力で、0.1%の売れる可能性を追い求めてきたからか
  4. 70年代までの日本は、無いものだらけだったからか
  5. 人口も、企業数も、右肩上がりに増えていたからか
  6. 海外へ市場を広げたからか
  7. どこかに無理が生じているから

でしょう。他にもあるかも知れません。

5.先ず信より始めよ。民 信なくんば 立たず

1~6は良しとして、7の、無理とは?

  • お客さんの迷惑かも知れません。
  • 従業員の精神的な苦痛かも知れません。
  • 下請けの利益の圧迫かも知れません。
  • 粉飾、偽装、癒着、贈収賄かも知れません。

はたして、お客さんに迷惑をかけるのが経営でしょうか?

従業員を苦しめるのが経営でしょうか?

顧客の集合体である社会をだますのが経営でしょうか?

下請けだって、立場が変われば、お客様です。親類縁者も友人知人もいます。人の口に戸は立てられません。

いったい、誰のために、経営(金儲け)するのでしょう?

個人の給与は、会社から受け取りますから、消費しようと、貯蓄しようと、個人の自由ですが、

会社の利益は、社会から受け取りますので、

社会の役に立てなければ、企業としての存在価値がありません。

平たく問うならば、

  • どうして○○(その商品)を売っているんですか?
  • 食品偽装の時みたいに、私たち客を殺すためじゃありませんよね?
  • まさか、従業員を苦しめるためじゃありませんよね?
  • 稼ぐのはいいけれど、何のために稼ぐんですか?
  • その売上金は、誰から頂くんですか?顧客の集合体である社会ですよね?
  • 稼いだ利益を、どうするんですか?顧客満足じゃなくて、自己満足ですか?
  • 自分たちさえ儲かればいいんですか?雇用を増やすとか還元しないんですか?
  • おたくの話は、信用できるんですか?

ということです。よって、

『先ず 信より始めよ。信なくんば 立たず』

(まず、信用を築こう。味方の信頼なくして 経営は 成り立たない)

その信用を築くために、経営者の理念が問われます。

パナソニックの創業者である松下幸之助さん曰く、

「経営理念を確立して、浸透させれば、その事業は、半分成功したものと同じである」

翻せば、

「経営理念を確立せず、あるいは、浸透させられなければ、その事業は、半分失敗したものと同じである」

(第二回へ続く)http://www.insightnow.jp/article/keieisenryaku2

[追記]

理念の作り方については、各論になっていきますので、ここでは割愛しますが、一例として

http://www.insightnow.jp/article/8400

に社是・社訓の作り方が載っています。

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