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価値生産時間について/竹林 篤実

INSIGHT NOW! / 2016年8月8日 13時5分

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竹林 篤実 / コミュニケーション研究所

100時間vs40時間

起業を志し、大きな成功を望むのなら、人一倍の努力が必要。そう言われれば、何となくそのとおりだと思うだろう。
「成功したいのなら、1週間に100時間働け」と言ったのは、テスラ・モーターズの創業者イーロン・マスクだ。彼の教えに従うためには、まず7日間休みなく働かなければならない。それでも一日あたり14時間強働くことになる。これだけのハードワークをこなすとなると、睡眠時間も最低6時間は必要だろう。残りの4時間ほどで3食をとり、シャワーを浴びてとなると、他に何かする時間はほとんどない。実際、イーロン・マスクは「起きている時間をすべて働くことに捧げる」と語っている。
一方で、生産性を高めるためには、週40時間が良いという説がある。ブログの記事で見かけた理屈だから、真偽の程は定かではない。その記事には「長年の貴重な諸研究により、労働時間が週40時間以上になると生産性が著しく低下することが実証されています」と記されてもいた。実証されているのなら、元ネタを教えてほしいと思うけれど、そこまで望むのは難しいか。
イーロン・マスクが週に100時間働いて、生産性が落ちたということはないはず。では、週100時間説と40時間説について、どう受け止めればよいだろうか。


朝4時起きはハードワークか?

筆者も、実はハードワーキングが決して嫌いではない。というか、知人からはハードに仕事をしていると思われているかもしれない。朝は4時ぐらいから仕事を始めている。もっとも夕方5時ぐらいには嫌になっている。いやんなると、目の前にひえひえに冷えたビールグラスが浮かんでくる。
AM4時に起きるからといって、PM5時までびっちり仕事をしているわけではない。そんなことをしたら持たないであろうことは、感覚的に理解している。だから、朝は2時間ほど集中したら走りに行き、シャワーして朝ごはんを食べて、次の仕事にかかる。
そこから11時ぐらいまでがんばったら、お昼ごはんの時間である。早起きして走ったりするから、お腹も早く空く。ごはん屋さんの開く時間が、だいたい11時半。一番に入るとお店もすいているので、ゆったりと食べられる。
食事から戻って13時前ぐらいから午後の仕事にかかり、時に15分ほど居眠りをはさみながら17時ぐらいまで、もうひと踏ん張り。
4時から17時となれば13時間だが、そのうちの4時間ほどは仕事をしていない。実労働時間は8時間ぐらいだろう。と思っていたら、これが大違いだった。


仕事時間と仕事品質の関係

40時間以上仕事をすると効率的ではない。そう言い切られると、いささか不安になる。フリーランスとして仕事をしている以上、仕事量を減らすことは売上減少、すなわち実入りがそれだけ減ることを意味する。
従って、仕事は受けられるだけ受ける主義である。取材日時がバッティングしてしまってはどうしようもないが、それ以外のケースなら、なるべくオファーは断らない。土日などに取材を打診されると、他の仕事とカブる心配がないから喜んで受けてしまったりする。
そんな日々を送っていると、当然、一週間に40時間以上働いている。自分ではそう思っていた。けれども、それで効率が落ちているとすればどうなるのか。
書き仕事で効率が落ちると、原稿のクォリティに悪影響が出るのではないか。自分では「やっつけ」仕事だけはやるまいと決めている。一度でも、依頼主から「手を抜いた」と思われたら、次の仕事はないからだ。相手のクライテリアに照らし合わせてみて「このレベルではダメですな」と言われるのなら、それは仕方がないこと。最善を尽くしても、手の届かない世界のあることはわかっている。
だから、がんばっているつもりなのだが、知らず知らずの内に『書く・チェックする・書き直す・推敲する』レベルが甘くなっていることはないのか。40時間以上働いているがためにクォリティが落ちているとすれば、それは問題である。


実労働時間を計ってみると

ここは、まず現状を掴むことである。自分は一体どれぐらいの時間、集中して仕事をしているのか。実労働時間を計ってみることにした。といっても大層なことをするわけではない。テキストエディターで原稿仕事を始める前にストップウォッチアプリのスイッチを入れ、終わったら止めて、時間をExcelに記録する。書く仕事、聴く・読む仕事(取材)、打合せ(ほとんどないけど)の3種類に分けて、それぞれ時間を実測してみた。
その結果、7月27日から31日までの、実労働時間は28時間44分、1日平均5時間44分である。8月は7日までで32時間、1日平均4時間35分。全然、仕事していないことが明らかになってしまった。取材に出かけるとき以外は、基本的に机に向かっているはずなのに、この体たらくぶりはどうしたことか。
時間はかなり厳密に計測した。つまり、原稿を書いていて、ちょっとメールをチェックしたとか、ブログを読んで、リンク先を見に行っていたなどの時間は、必ずストップウォッチを止める。気分転換した後、原稿を書き始める時に、またストップウォッチのスイッチを押す。
だから、計測時間は、リアルに実労働時間である。実際、集中して書いたなと振り返ってみても、1時間経っていることはあまりない。筆者の場合、それぐらいしか集中力は続かないようだ。


価値創造時間を考える

筆者の仕事は、取材をして原稿に書き起こすことだ。取材のための下調べから取材、そして原稿を仕上げて納品するまでが一本の仕事である。すなわち、ここまでの工程をきちんと仕上げることで、対価をいただく。逆にいえば、価値創造に費やしている時間である。
土日も関係なく、朝早くから夕方まで仕事をしているつもりでも、実際の価値創造時間は、1週間で32時間しかない(計測し始めて10日だから、これから伸びる可能性はあるかもしれない)。効率仕事時間40時間説に従うなら、まだ仕事をできるはず。少なくとも効率が落ちる心配はない、ということだ。
ただ、厳密に時間を計ってみたわかったのが、価値創造以外に費やしている時間の多いこと。企業などにお勤めの方は、価値創造時間とそうではない時間を、簡単に分けることは難しいとは思うが、一度、自分の価値創造時間を計ってみられることをおススメする(ちなみに、この原稿は伊丹空港での待ち時間に書き始め、空港バスの中で8割ほど書いて、取材先で取材が始まるまでの15分ほどで仕上げた)

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