キュレーションサイトの問題は、企業のオウンドメディアも他人ごとではない/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2017年2月3日 10時58分
猪口 真 / 株式会社パトス
まとめサイトやキュレーションサイトが酷いことになっているが、業におけるコンテンツマーケティングサイト(オウンドメディアとして)にしても危なっかしいことをやっているところはかなり多い。
これにステマの問題もからんでくると、企業の広報担当として気が気でない人も多いだろう。さらに、普段から配信しているメルマガの内容も含めると、何が良くて何がだめなのかはっきりと分からない担当者も多いのではないか。
本来、企業の広報Webサイト、あるいはメールマガジンは、その企業の広告活動をするためにあるのだから、自社サイトで何を言おうが(虚偽でなければ)、基本的には問題ない。
しかし、Webマーケティングの手法論が様々生み出され、あらゆる手法を駆使するようになり、さらに、クラウドや安価なCMSのサービスの出現によって、ローコストで自社メディアとしてオウンドメディアを持つことができるようになった。その時点ですでに「メディア」と呼んでいるのだから、「自ら発信する」場を選んだわけだ。
そして、ここで自社のソリューションにつながるようなコンテンツ(広告ではない!)を掲載し、頻繁な更新をしていくことで顧客とのリレーションを活性化していこうと、コンテンツマーケティングという手法、概念がもてはやされた。
しかし、メディアとはいえ、最初から膨大な読者数がいるわけでもなく、ただWebサイトを一生懸命に更新しても、PVはいっこうに増えないし、資料請求者が一気に増えるわけでもない。ごくまれに「いつも楽しみにしていますよ」とおなじみの客からほめていただくぐらいだ。
「いったい初期構築費とコンテンツの運営費用はいつ回収できるのか?」といった声のなか、いたしかたなく、なかば義務的に行っていた「メールマガジン」配信の仕組みの中で、URLをはりつけて送るという手作業を繰り返すことになる。
とはいえ、それでもPVはたかがしれているため、「メディア」と呼んでいる体裁上、貧相なPVでは説明責任も果たせず、「メディア」と言えるだけのPVを目指すことになる。
もともと、広くマスに届けたい広告に反発するかのように生まれ、商品のダイレクト訴求ではなく、背景にあるストーリーを共有してもらおうと始まったものだが、そうそう簡単に斬新で感動的なストーリーが生み出せるわけもなく、平凡な話を繰り返すか、更新頻度が少しずつ遅れてしまい、なし崩し的に自然消滅の道をたどることになる。
それでもなんとかPVを上げ、続けようとすると、ウケのいいコンテンツを狙うことになり、キュレーション的な発想が生まれる。(顧客は知りたい情報のはずだ、という思いもある)
結局、広報、宣伝担当としては、PV以外に価値を表現できるものもなく、メディア化を目指すことになる。
企業の広報活動がそうしたキュレーションサイトと同様の課題を持つようになったことの、ひとつの原因に、評価基準(KPI)の設定があるのではないかと思う。
本質的にコンテンツマーケティングは、広告ではなくコンテンツの共感が目的なので、PVやインプレッションというよりも、見込み顧客としての育成、あるいは既客とのリレーション開発を重視すべきなのだが、基本的には、PVしか評価の対象にはなっていない。というか、宣伝やマーケティング担当の管理職には、PVしか興味ない人が圧倒的に多い。
コンテンツマーケティングの出現は、こうした従来広告モデルに警鐘を鳴らす役目だったはずなのだが、結局は、効果測定の仕組みの中に埋もれてしまい、適切な運用ができなくなってきている。
コンテンツマーケティングの本質が理解できていないために、配信するコンテンツと広告が同じ土俵に乗ってしまっているため、著作権のあるコンテンツが自社配信の広告と同じように扱われてしまっているという、ケースすらある。
最近は、こうした流れを受け、ビューアビリティやアドベリフィケーションといった、広告枠の品質を評価し、コントロールするような仕組みもある、また、広告枠を集めマーケットをつくっていくイメージのPMP(プライベートマーケットプレイス)という仕組みも生まれているが、それとて万能ではなく、配信側として仕組みさえ使えば問題ない、ということにもならないだろう。
企業のオウンドメディアの盛衰にもかかわるキュレーションの問題は、企業にとって、改めてコンテンツマーケティングのありようを考えるべきいいきっかけとしたいものだ。
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