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なぜ軍人が政府高官になれるのか?  軍事理論と組織経営の関係/増沢 隆太

INSIGHT NOW! / 2017年2月23日 6時0分

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増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

・軍人と政治
途上国などでクーデターが起こるとだいたいその指揮官である軍総司令官などの人が暫定大統領に就き、そのまま正規の大統領のような国家元首になることが多いといえます。クーデターそのものが武力による政権奪取ですから、その実力組織のトップがリーダーになるのは必然で、結果として多くの国で軍人が国家元首になる例が多数見られます。

ただ多くの場合こうしたクーデターは途上国など、治安や政治体制の安定していない国情の地域であることが多いといえます。逆に先進国ではクーデター自体がそもそも普通は見られないことから、途上国の元首に軍人が多いことになります。

しかし今回は超大国であるアメリカです。国家安全保障担当補佐官マイケル・フリン氏の電撃辞任を継いで、ハーバート・マクマスター中将がその任に着きました。トランプ政権ではマティス国防長官、ケリー国土安全保障長官と、軍人出身者が多数見られます。良く考えれば退任したフリン前補佐官も陸軍中将でした。

・歴代大統領
歴代米国大統領を見てみますと、プロの政治家として政治経験を積んだ人が多数です。世界中、特に先進国では共通性が高いですが、弁護士や官僚から政治家となるルートが本流といえます。かつてピーナツ畑の農家とあだ名されたカーター元大統領も、ジョージア州議員、州知事としっかり政治経験を積んでいます。

そんなアメリカでもバリバリの軍人出身者がいます。もちろんアイゼンハワー元大統領です。ウエストポイントの陸軍士官学校を出た生粋の軍人で、第二次大戦における「史上最大の作戦」ノルマンディー上陸作戦を、連合軍最高司令官として務めました。その後大統領に就任したのは、第二次大戦という歴史的な特別の環境だったからといえます。

こうした戦時のような特殊事情がなくなった20世紀後半は、正統派である政治家出身者が代々の合衆国大統領を務めましたが、今回のトランプ氏はプロ政治家ではなくビジネスマンですので、かなりの変わりダネです。レーガン元大統領も俳優大統領といわれましたが、しっかりカリフォルニア州知事として、政治経験はありました。

・軍事理論と経営理論
マネジメントという科学は軍事理論との共通点が多数あります。販売戦略で有名なランチェスター戦略は兵力と武器性能を用いた軍事理論そのものです。孫子やクラウゼヴィッツなどの戦略論も経営指南書として愛読されています。「戦略」という思考が経営と戦争では共通して重要であり、親和性が高いからでしょう。

これが軍人が政治家になれる理由の一つだといえます。つまり軍隊という最も基本的な組織集団で、なおかつ自己完結できる高度な組織性を持つ存在において、指揮官を務めた人間は、組織管理において高い能力があると判断できます。

ましてマクマスター中将は理論家で学究肌という評判ですから、国家安全保障担当大統領補佐官職としての資質は十分ありそうです。ニクソン、フォード、レーガン政権で補佐官や国務長官を務めたアレクザンダー・ヘイグ将軍の例もあります。まだまだ予断を許さないトランプ政権ですが、軍出身者が高官を務めること自体は一定の意味があり、能力において否定されるいわれはないと思います。

私もロンドン大学では戦略を研究しましたが、帰国後そのままビジネスの世界に戻り、面接では戦略論を経営に生かしたいと訴え、採用されたと思っています。講演会ではよく戦争や戦国時代の話を例に話しますが、特に聴衆に経営層の方が多い年齢の講演会ではとても興味をもって聞いてもらえます。経営や組織について軍事理論は共通点が多く、そうした知識や経験も同様に共通項が多いのでしょう。

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