緊張高まる南シナ海 「ポスト・ウクライナ」の焦点はアジアか?【ビジネス塾】
ITライフハック / 2014年5月16日 9時0分
南シナ海情勢が緊張している。
中国が南シナ海のパラセル(西沙)諸島近海で石油掘削を始めたことに対し、同諸島の領有を中国と争うベトナムが抗議、作業を阻止しようとした。これに対し、中国船がベトナム船に体当たりし、負傷者が出た。その後、パラセル近海には両国艦船が出動し、にらみ合いが続いている。中国は作業を止めず、滑走路状の施設も建設している。
また、フィリピンはスプラトリー(南沙)諸島で中国漁船を拿捕(だほ)。理由は、中国船が「絶滅危ぐ種を積んでいた」ことで、フィリピンは乗組員を拘束している。
とくに緊張しているのが、中国とベトナムとの間だ。中国はベトナムの抗議に譲る気配はなく、逆に、対空ミサイルを搭載したフリゲート艦を配備した。ベトナム国内では反中デモが起き、日本企業も「とばっちり」を受けている。
アジアの地政学的リスクはどうなるのか。
■かつて砲火を交えた中越
両国とも「戦争がしたい」わけではないが、互いに譲る構えはない。とくに中国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の「自制」要求も「どこふく風」という状況だ。
パラセルをめぐっては、中国とベトナムは過去、砲火を交えたことがある。陸上でも、1970年代末に中越紛争があった。いずれも中国側が優位であった。今回もベトナムが掘削を止めようと思えば、戦争に近いことに踏み切らない限り難しいだろう。その意味で、戦争の危険性を含んで推移しそうだ。
■中国の国内不安は強い
どの国でもそうだが、国内事情が厳しいときに、外国に対して強気の態度に出る。国民の不満をそらそうというインセンティブが働くからだ。
ベトナムの抗議は当然予測できたろうに、掘削に踏み切った中国も同様だ。購買力平価の国内総生産(GDP)ではすでに世界一になったといわれるが、今年の成長率は7.5%と予想されているが、これは1990年以来もっとも低いものだ。7.5%に達しないという予測さえある。
2~3年前まで、中国の指導部は「保八」と言い、「8%成長を守れないと雇用が維持できない」と言ってきたが、それも難しくなっているわけだ。しかも、日本とは比べものにならないほどの経済格差、民族問題なども抱えている。とくにウイグル問題はテロ事件が頻発、紛争形態が従来とは変わってきた。
■米国の出方を探る中国
編集部は、ちまたにあふれる「中国崩壊論」には与しないが、少なくても、経済成長の鈍化と国民の政府への批判が高まること、政府はそれをそらそうと強硬姿勢に出ること、これらは間違いないと思う。
ただ、尖閣諸島に対して強硬な手段をとる可能性は、当面は低いだろう。中国としてはベトナムのほかにも「敵」を増やしたくないだろうし、日本やフィリピンを相手にすれば米国の存在が直ちに問題になる(ベトナムは米国の同盟国ではない)。現在のところ、中国はベトナムを相手に、「米国の出方をうかがっている」というところか。
ウクライナをめぐる「地政学的リスク」が日本の株式市場にも影を投げかけていたが、すぐ近くのアジアもきな臭くなってきた。香港市場ではベトナム関連銘柄が下落しており、日本への影響を注視したい。
(編集部)
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