なぜ、大阪王将“ナメクジ騒動”告発者は逮捕された? 意外と知らない「公益通報」のあれこれ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月22日 7時0分
「元従業員男性は会社を辞めてしまっていたから、公益通報者が保護される法律上の要件から外れてしまい、逮捕されたのだ!」
退職者であっても、退職後1年以内に公益通報すれば、その後は無期限に保護される決まりがあるので、退職者かどうかは無関係である。
「偽計等業務妨害」って、ウソを広めたときの罪でしょ? ナメクジは実際にいたのになんで捕まるの?
確かに投稿写真にナメクジは1匹写っていたが、「大量にいる」として情報を拡散した点が「人を欺く行為」に当たると判断されたものとみられる。
現時点での結論
元従業員の告発は「善意」や「正義感」によるものではなく「店側とトラブルを抱えていたゆえの腹いせ」であり、実態としては「誹謗中傷」に当たると判断されているようだ。
しかも、店側は休業からのフランチャイズ契約解除、閉店までを余儀なくされており、実際の金銭的被害も出ている以上、相当悪質なものと扱われることになるだろう。
●正しい「公益通報」とは? 内部告発者は、なぜ保護されなかったのか?
わが国には「公益通報」と「公益通報者保護制度」というものがある。
事業者における法令違反行為を知った従業員が、組織内の通報窓口や行政機関、報道機関などに通報することが公益通報であり、公益通報した従業員に対して解雇や降格、減給、損害賠償請求等の不利益な取扱いを禁止するのが公益通報者保護制度だ。
「飲食店が不衛生な厨房を放置したまま運営している」ことを通報するのは明らかに公益通報であるから、「SNSで告発した元従業員が元勤務先から訴えられる」事態はいかにも理不尽に感じられるだろう。「国は勇気をもって声を上げた人を守ってくれないのか……」と幻滅した人さえいるかもしれない。
今般のケースでは元従業員に悪意があったことが判明したため(不正目的)、そもそも公益通報には該当しないが、仮にこの元従業員が純粋に善意で店の不衛生な状況をSNSで告発していたとしても、残念ながら公益通報にはならなかっただろう。
なぜなら、一般的な感覚における『内部告発』と、法的に告発者が保護される『公益通報』は別モノであり、今般のケースは公益通報の正当な手順を踏んでいなかったため、内部告発者である元従業員は保護対象にならなかったためである。
公益通報と認められるためには細かく要件が定められている。
具体的には、以下のようなものだ(参照:消費者庁「公益通報ハンドブック」)。
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