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なぜ、大阪王将“ナメクジ騒動”告発者は逮捕された? 意外と知らない「公益通報」のあれこれ

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月22日 7時0分

・通報主体は「労働者」「退職して1年以内の者」「法人経営に従事する役員」

・通報内容は「役務提供先で、通報対象事実となる法令違反行為が生じている旨」

・通報先は「事業者内部」「権限を有する行政機関」「報道機関、消費者団体、労働組合などその他事業者外部」

 今般のケースでは「通報先として定められた行政機関窓口(本件では保健所)に通報せず、先にSNSで不特定多数にさらしてしまった」ために、正当な公益通報に該当せず、保護要件を満たさなかったものと考えられる。

 また、元従業員は告発に関連したSNS、YouTube投稿によって視聴者から課金収益を得ていたとのことで「仮に店舗側に落ち度があったとしても、風評流布によって私刑をあおって収益を得ていた行為は問題」と判断された可能性が高い。

 そもそも私刑は緊急行為(正当防衛や緊急避難)以外では原則として容認されていないこともあり、それで収益を上げようとすれば非難されても仕方ないだろう。

●企業はどう対処していけばよいのか

 先述の通り、22年6月1日から改正公益通報者保護法が施行されており、アルバイトや派遣社員も含んだ常勤労働者数が300人を超える事業者には、内部通報窓口を設置し、通報された問題に対して迅速かつ適切に対応することが義務付けられている。

 もちろん、通報者や相談者に不利益な取扱いをすることは禁じられており、通報窓口担当者には情報の守秘義務が課せられている。

 今のところ、常勤従業員数300人未満の事業者は努力義務に留まっているものの、企業規模や従業員数にかかわらず、内部通報制度を整備せず、通報に対して適切に対応できない場合、消費者庁による行政措置(報告徴収、助言、指導、勧告)の対象となり、企業名が公表されることもある。

 本来であれば内部で早期解決できたはずの問題が、SNSで暴露されたり、後になって行政処分が下されたりすることになれば、企業の信用と評判を大きくおとしめることにもなりかねないだろう。

 大阪王将のケースも、もし社内で内部通報窓口が設置され、通報に対して適切に対処できていれば、フランチャイズ契約解除、店舗閉鎖、刑事事件に至るような騒動にも至らなかったかもしれない。

 各社は本件を他山の石とし、内部通報制度を積極的に活用すべきだろう。不正や不祥事を早期に発見し、是正できれば、企業と従業員を守ることにつながるはずだ。

著者プロフィール・新田龍(にったりょう)

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