ソフトバンクが進める災害復興DX 能登半島地震で展開した「空・陸・水の支援」
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月18日 8時0分
藤田課長は実際に被災地を支援して、あらためてシャワーの重要性をひしひしと感じたと話す。
「避難所から2~3週間出ていない方もたくさんいらっしゃいました。シャワーを浴びたほとんどの方が弾けるような笑顔で出てくる姿を目の当たりにしました。シャワーという日常にあるものが、被災地においては心理的な部分でも大きな好影響を与えてくれるものだと思い、活動の意義深さを感じました」
●知られざる取り組みの背後にあったもの
3つ目が、医療・行政MaaS(移動型サービス)の取り組みだ。ソフトバンクのグループ企業のMONET Technologiesが、移動における社会課題の解決や新たな価値創造を可能にする未来のMaaS事業に取り組んでいて、石川県では各種ライフラインの代わりになる機器などを搭載した防災車両を提供している。この車両は、移動型診療車としても活用でき、車両に搭載した機器でオンライン診療を提供する。
被災直後でも太陽光パネルやバッテリーなどにより自前で電源を確保し、通信もスターリンクを活用した衛星通信が可能だ。さらにWOTAの製品も搭載することで、限られた水資源の有効活用もできる。医師によるオンライン診療によって応急処置や薬の処方もでき、例えば持病を抱える避難民を診療し、薬の継続処方などができる。
この移動型サービスは、医療用途だけでなく行政用途にも活用可能で、他の災害事例では罹災証明の発行手続きにあたったこともある。2月19日から石川県輪島市で無償提供が進んでいる。
こうした支援体制をソフトバンクはどのように構築していったのか。そこにはソフトバンク法人事業統括顧問を務める、前金沢市長の山野之義さんの知られざる取り組みがあった。
「地震発生時は実家の金沢市にいました。その後、スターリンクとWOTA、医療MaaSの設置や配備をソフトバンクと、石川県の馳浩知事をはじめ各自治体の首長との連携を取りながら進めていった形です。WOTAについては馳知事、西垣淳子副知事には昨年のうちに効果を説明していましたから、1月2日の早朝に提案したときも、すぐに理解をしてくださり、スムーズに対応をしていただいて本当に良かったと思います」(山野さん)
長期間の停電による通信インフラの喪失は重要な課題で、特にスターリンクの設置は喫緊の課題だったと振り返る。
「自治体の職員からも、全員が利用できる環境を作ってほしいと要請を受けました。設置場所によってはうまくつながらないこともありました。私が被災地入りした1月7日の段階では、通信インフラはまさに『命の情報インフラ』だったと思います。かつて知事選で共に戦った馳知事の理解もあり、WOTAと医療MaaSの配備も早い段階で進みました」(山野さん)
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