1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

シェアサイクルはどう変わる? 高価格化と公益性に揺れるHELLO CYCLINGの葛藤

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月1日 15時19分

 これは通常のシェアサイクルが30分130円の価格に対し、30分300円という高価格設定なのですが、ユーザーの中にはこのe-bikeタイプを「当たり」だと好んで利用する方もいます。

――JRのグリーン車もそうですが、高価格帯サービスを好んで利用するユーザーも一定数いるので、こうした層のニーズを拾えますね。

 公共交通より安いから乗っているようなコスパ志向の利用者も少なくない一方で、快適な移動を求めて、倍以上の値段でも気にせず利用する方もいます。ユーザーの利用動向が二極化しているので、高価格帯の路線に寄っていく方針もあり得るとは思います。実際に、自転車をポートに設置できる台数は限られているので、高単価な利益を生み出す戦略は十分に考えられます。ただし、われわれはその地域の二次交通を担っている公共性もあり、その意味では廉価な部分も必要です。この2つの考え方は悩ましい部分ではあります。

――比較的廉価なサービスの車体であっても、他事業者と比べると高単価な車体を投入していることによって、差別化を図れている部分が大きいと思います。この部分はどのように決めているのでしょうか。

 高価格帯の車体導入を検討したきっかけは、欧州のシェアモビリティサービスの体験からです。もともと公共のシェアサイクルがある街に、ハイスペックなebikeのシェアリングサービスの会社が参入し、支持するユーザー層もそれぞれに存在して共存していました。

 車体の選定に際しては、新しい車体は必ず東京・竹芝の本社から、私の自宅がある大宮まで乗って帰って試すようにしています。ちょうど30キロメートルくらいなので、この距離を乗ることで、バッテリーの性能がスペックほど持つのかどうか、車体に設計はしっかりしているのかどうかなどが見えてきます。周囲からは「社長が体を張るのはやめろ」とは言われていますが(笑)。

――社長自ら30キロも乗って車体を試しているのですね。

 実際に乗って試してみると、長距離移動にバッテリーが持つのかどうか、車体にガタつきなどがでないか、特に風の強い日に荒川などの橋をきちんと電動アシストして漕げるのかどうかが分かってきます。東京には急な坂も多いですから、本当に電動アシストできるのかどうかは重要ですよね。

――都市部だと短距離の利用が多いとは思いますが、観光地では1日30キロを超える長距離の利用も出てくるとは思います。

 例えば茨城県水戸市がまさに観光周遊型の利用が多いですね。ユーザーが過去にどのような移動をしたのか、たどれるようになっているのですが、水戸市の場合、隣の大洗町まで行って帰ってきている利用者も一部います。これは大洗がアニメ『ガールズ&パンツァー』の「聖地」になっていて、その利用だと考えられています。GPSデータから一時駐輪をしているスポットを可視化できますが、そのスポットが「聖地」の場所と一致しているためです。こういった利用は市内移動を意図した当初の想定を超えたものでした。「聖地巡礼」は地域内の細かい移動が多いので、シェアサイクルとの相性が良いんです。この傾向は愛知県岡崎市でも見られます。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください