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ぎょぎょ、水の量が多すぎる? 札幌の水族館「AOAO」で“脇役”が主役になった舞台裏

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月20日 7時56分

 「ん? 水族館の主役といえば、イルカとかサメのことかな? ひょっとしてこの水族館には主役がいないってこと?」と推測されたかもしれないが、その通りである。AOAOには、イルカもいないし、シャチもいない。アザラシもいなければ、エイもいない。

 水族館の主役がいないのには、理由があるのだ。その謎を解くために、時計の針を数年前に巻き戻す。新しい水族館をオープンするにあたって、関係者は「ああでもない、こうでもない」といった議論を交わしていた。構想に1年半ほどの時間をかけていく中で、ちょっと信じられない事態に陥ってしまう。

 施設の設計を進めているタイミングで「やっぱり主役は必要だよねー。頭がトンカチのような形をしている『シュモクザメ』を展示しようよ」といった話をしていた。北海道には生息していないこともあって、主役をシュモクザメにする方向で話が進んでいった。しかし、である。予定していた水槽を配置して、そこに大きなサメを泳がせると、建物が重さに耐えられないことが分かってきたのだ。つまり、水の量が多すぎる問題である。

 館長の山内將生さんは、当時のことを次のように振り返る。「設計を担当した人も、建設に携わった人も、私たちも、水族館をつくったことがない人たちばかりでして。いわば“素人”が集まったこともあって、初歩的なミスをしてしまいました」

 山内さんは金融の世界を経験して、その後、水族館の運営などに携わる。全くの未経験者ではないものの、建物をイチから作り上げる経験がなかったので、重さの計算を見落としていたのだ。

●計算ミスで「アレもだめ、コレもだめ」

 この話を聞いたとき、「まあ、そういうこともあるよね。水槽をちょっと小さくするとか、水をちょっと減らせば問題ないでしょ」と思っていたが、そうでもなかったのだ。当初、400トンの水を使う予定だったが、150トンしか使えないことが分かってきた。実に、60%ほど減らす必要があったのだ。

 5%とか10%の話ではない。60%も減らさなければいけないとなると、抜本的な見直しが必要になる。計画を見直したのは、サメだけではない。一般的に、水族館では哺乳類も人気がある。アザラシ、アシカ、カワウソなどは表情が豊かで、人と目が合うことも。エサをあげる際には「ちょうだい、ちょうだい」をするので、来館者からは人気が高い。AOAOでも哺乳類の生育にチカラを入れていく予定だったが、大幅な変更を強いられることになったのだ。

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