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ぎょぎょ、水の量が多すぎる? 札幌の水族館「AOAO」で“脇役”が主役になった舞台裏

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月20日 7時56分

 オープン前は「アレもして、コレもして」と夢が膨らんでいたはずなのに、計算ミスで「アレもだめ、コレもだめ」となってしまった。できないことが増えていく中で、どのような手を打ったのか。ほとんどの読者は気付いていると思うが、脇役の登場である。

 例えば、5階を見てみよう。先ほど紹介したように43本の水槽が並んでいるわけだが、それぞれに特徴がある。「ヘコアユ」は頭を下に向けて泳いでいるし、エリンギのようなカタチをしている「イソンギンチャク」もいるし、見た目がもさもさしている「ウミシダ」もいるし、ぺったんこのカエル「ピパピパ(コモリガエル)」もいる。

 AOAOに足を運んだお客からは、このような声がよく届くという。「頭を下げているヘコアユはきれいだった。こんな魚、見たことがない」「ぺったんこのカエルを初めて見た。おもしろいね」と。しかし、である。AOAOに展示されている生物の多くは、他の水族館でも泳いでる。にもかかわらず、なぜ「初めて見た」といったコメントが多いのか。

 これは仮説になるが、多くの人は水族館に行って「シャチがよかったよ。迫力があってやっぱりいいよね」「エイが泳ぐ姿は優雅だったよなあ」といった具合に、主役の話で盛り上がる。もちろん、そこには脇役も存在しているが、主役のイメージが強すぎて、記憶が残っていないのではないか。

 当初、予定していた計画は大幅な変更を余儀なくされたので、AOAOのスタッフは残された40%の水で何ができるのかを考えた。「あれもできる、これもできる」ではなく「あれもできない、これもできない」という状況の中から、「これとこれを展示して、伝え方を工夫しよう」となったのだ。

 他の水族館でも見られる脇役を主役に――。発想を逆転させることで、独自色を打ち出すことにしたのだ。

●課題が見えてきた

 AOAOを10カ月ほど運営してみて、課題も見えてきたという。「来館者の数」だ。

 冒頭で「この1年で85万~90万人ほどを見込んでいる」といった話を紹介したが、当初の計画より1~2割ほど少ない。「なんだやっぱり脇役だと、集客が苦戦しているじゃないか」と思われたかもしれないが、来館者が少ない要因は2つある。

 1つは、子どもの数だ。山内さんは「水族館=子ども」と考えていて、特に手を打たなくても、たくさんの子どもがやって来ると思っていた。しかし、AOAOがある場所は繁華街&オフィス街である。子どもの数は少ないので、「こちらからPRしなければ集客が難しいことが分かってきた」(山内さん)

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