『キャプテン翼』が連載終了 その功績と“機会損失”を振り返る
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月25日 8時5分
出所:キャプテン翼公式Webサイト
鳥山明氏の代表作『Dr.スランプ』と『ドラゴンボール』が人気を博していた1980年代の少年ジャンプにはもう一つ、国内外に多大な影響を与えた作品がある。それが『キャプテン翼』だ。
『キャプテン翼』は2024年4月の雑誌掲載にて漫画連載を終了し、今後はネーム形式で公式Webサイトなどに掲載すると発表した。これを機に『キャプテン翼』の功績を振り返りつつ、コンテンツビジネスとしての成功や困難、40年間の環境変化などについて考察したい。
●「マイナースポーツ」だった日本のサッカー
『キャプテン翼』は高橋陽一氏によって描かれたサッカー漫画であり、単行本はシリーズを通して100巻を超えるロングラン作品である。しかし、2000年代以降は前述した『ドラゴンボール』をはじめとした他のジャンプ作品と比べてメディア露出が減ったため、30代以下の層にはその功績を十分に認識されていないのではないか。
そのため、まずは国内における当作品の功績について紹介する。『キャプテン翼』の連載が始まった1981年当時、日本におけるサッカーは静岡県や東京都町田市など一部地域で盛んだったものの、全国的にはマイナーなスポーツだった。当時の国際大会の成績を見ても、日本は“サッカー後進国”だったことが分かる。このような環境下で、高橋陽一氏がサッカーの面白さ、楽しさを伝えることをコンセプトに描いたのがこの作品である。
●「スポ根」からの脱却
当時、スポーツ漫画と言えば努力や根性で苦しい練習に耐えることを前面に出した、いわゆる「スポ根」ものが主流であった。一方、『キャプテン翼』は練習も含めて純粋にサッカーを楽しむ様子を描き、当時の子どもたちにはサッカーという競技そのものが魅力的なものとして映った。複雑な背景や思想などは含めず、エンターテインメントに特化したことが成功要因と考えられる。
これは前回のテーマである『ドラゴンボール』が人気になった要因とも共通する。集英社および少年ジャンプ編集部はDr.スランプ以降、それまで積極的ではなかったジャンルの漫画のアニメ化にも取り組み始めている。1983年に始まった『キャプテン翼』のアニメもその一つであり、結果として大ヒット作品となった。
『キャプテン翼』は、単なるエンターテインメントとしての成功にとどまらず、日本のスポーツ文化に大きな影響を与えた。この作品は漫画とアニメを通じて、子どもたちにサッカーというスポーツの存在と、サッカーが楽しいことを認知・浸透させた。日本のサッカーが、マイナースポーツからメジャースポーツへと変わる土台を築いた存在の一つといえる。
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