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「百貨店閉店でにぎわいが消えた」キャンペーンに、新聞が“チカラ”を入れる理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月26日 6時40分

 では、なぜ“にぎわい”が消えたのかというと、ごくシンプルに人口減少だ。

 2024年4月に総務省が発表した人口推計によると、2023年は前年比で59万5000人減っている。これは山形屋のある鹿児島市の人口と同じだ。

●活気が失われている本当の理由

 この国は今、わずか1年の間に鹿児島市が丸ごとごそっと消滅するほど人口が減っている。しかも、年を追うごとに高齢者の比率が増えていくのだ。身近にいる70歳や80歳を見てみるといい。病院には足しげく通うが、繁華街や市街地の大型商業施設などはそれほど通わないのではないか。シニアになるとどうしても外に出るのが“おっくう”になるので“にぎわい”と無縁になっていくものなのだ。

 つまり、地方の街を歩いて“にぎわい”とほど遠く、活気が失われているのは「百貨店が消えた街」だからなどではなく、「人口が減った街」だからであって、少子高齢化が世界一のスピードで進行しているこの国では当たり前の光景なのだ。

 だからこそ、『南日本新聞』や『朝日新聞』の「百貨店閉店でにぎわいが消えた」キャンペーンはかなり問題だと思っている。「新聞は事実を伝える」と信じてやまないピュアな人がこれらの記事を読んだら、「そっか、じゃあ“にぎわい”を取り戻すには、百貨店を再建すればいいんだな」というミスリードを招いてしまうのだ。

 人口が急速に減っている地方都市では、もはや「地域住民に愛される百貨店」というビジネスモデルは成立しない。つまり、「百貨店で街のにぎわいを生み出す」というのは、新聞ジャーナリズム的には地域活性化の美しいストーリーなのだが、現実には「勝算ゼロの負け戦」にすぎないのだ。

 ただ、これは別に筆者が想像で勝手に言っているようなことではなく、「商業施設のプロ」たちも同じ判断だ。分かりやすいのは2023年8月に閉店した北海道・函館市の商業施設「テーオーデパート」だ。

 ここも他のローカル百貨店同様、長く函館の人々に愛されてきた。なんとか存続できないかということで、大阪の不動産会社トライアングルが手を挙げて2024年8月に再オープンさせようと動いてきたのだが、最近「断念」した。『NHK北海道WEB』(6月14日付)の記事によると「主に地元の人たちの利用を想定した計画では、テナントの誘致がうまくいかなかった」というのだ。

 このあたりのシビアな現実を、トライアングルの竹内健一社長自身がNHKの取材に応じて、以下のように率直に答えている。

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