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ビール列車があるのに、なぜ「京急蒲タコハイ駅」は非難された? 現地で聞いた「何が悪かったのか」の声

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月29日 10時7分

 そうした実績を積み重ねてきた上での京急蒲タコハイ駅イベントだった。

 これまでのイベントは“愚行”ではなくて、今になって“愚行”と新しく解釈された形で、環境の変化が起きたと考えられる。

 その変化とは、2月19日に厚生労働省が発表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」だ。当該ガイドラインは、「避けるべき飲酒等について」として、5つの項目を挙げている。

 このうち、酒に関する産業に影響を与えそうなのは、「一時多量飲酒(特に短時間での多量飲酒)」だ。いずれ居酒屋・パブなどの飲み放題は続けられなくなると言われている。さらに、将来的には公共の場でのさまざまな酒の提供に関する禁止事項が、タバコと同じように法制化される可能性がある。

 2020年4月に改正健康増進法が全面施行されたことで、全ての公共施設が原則屋内禁煙となった。望まない受動喫煙による、肺がんなどの健康被害から非喫煙者を守るのが目的だ。

 厚労省のバックにはWHO(世界保健機関)がいて、タバコの次は酒の規制だと、飲食関係者の間では言われてきた。いよいよ本格的に動き出した印象がある。

●酒類のマーケティング全てを否定しているわけではない

 ASKの公式Webサイトで、「『京急蒲タコハイ駅』への駅呼称変更とホームでの酒場開店の中止を求める申し入れ書に関するお問い合わせについて」(6月18日付)を閲覧してみた。そこでは、酒類業界団体が共同で定めた「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」(1988年12月9日制定、2019年7月1日最終改正)について言及している。

 しかし、「今回の事例のように、駅名自体を酒類の商品名にして駅空間の仕様を変更することや、プロモーションの一環として駅ホームで酒場を営業することは、当時はまったく想定していなかったため、自主規制項目に規定されていない」と明記している。

 つまり、サントリーと京急は、法、条例はもちろん、自主基準をも破っていなかったのだ。

 お酒を使った街の活性化イベントは、ビールを楽しむ「オクトーバーフェスト」など、公園のような公共の場で数多く開催されている。こうしたイベントが、「公共性を完全に無視した愚行」として、今後は開催されなくなるのではないかという不安や疑念が、全国各地の商店街や行政からも聞かれるようになってきた。

 しかし、ASKは「酒類のマーケティングのすべてを否定しているわけではない」としている。今回は不特定多数が利用する極めて公共性が強い場といった駅の特殊性を勘案し、駅に限定した超法規・超自主基準の抗議、中止の要請だったと考えられる。

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