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「プッチンプリン出荷停止」はなぜ起きた? “ベンダーのせい”にできない根深き問題

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月3日 8時10分

 今回の場合、かなり長期間利用したERPソフトウェア本体をバージョンアップすることに伴い、過去のカスタマイズとの整合性を取りながら開発、導入しなければならず、とても難易度が高かったのではないかと思います。

――企業各社は前バージョンのSAPを20年近く使い続けてきましたが、ついにサポートが終了し、2027年までに最新バージョンへの移行を迫られた。その移行の際に、以前行ったカスタマイズを今回も同じように行おうとしたわけですが、それには大変な作業が発生しますね。

廣原氏: そうなんです。前回カスタマイズをしたのがかなり昔だった場合、当時のカスタマイズ内容を熟知しているエンジニアはほとんど残っていないでしょうし、新しいバージョンのソフトウェアに合わせて、前回と同じ動作をするようにシステム構築するのは相当難易度が高かったと思います。

 しかし日本企業のバックオフィスの現状は、文化や商習慣の違いからERPをカスタマイズせざるを得ない事情があり、標準機能だけでは業務が回らない。どれだけ細心の注意を払っても移行の際にシステム障害が発生してしまうというリスクが発生します。

●日本の大企業が抱える「非効率」な習慣

――そもそも、日本企業はなぜそんなにERPの大規模なカスタマイズを行うのでしょう?

廣原氏: 私はこれを、日本企業のERP導入に共通する問題と捉えています。日本の企業文化や商習慣には、欧米のERPパッケージがそのまま適用しづらい部分が多くあります。例えば、日本特有の「締め請求」という商習慣。これは、月末までの取引をまとめて、その取引量や内容に応じて請求額を決定するというもので、日本以外では存在しない商習慣なのです。こういった日本独自のビジネス要件に対応するために、パッケージをカスタマイズせざるを得ないというのが実情です。

――ERPパッケージをそのまま使うのではなく、自社の業務に合わせてカスタマイズするというのは、日本企業に多いのでしょうか。

廣原氏: 多いと思います。私の経験から言うと、日本でERPを導入している大企業の多くは、何らかの形でカスタマイズしています。本来であれば、日本特有の商習慣であったとしても、ERPパッケージ側がベストプラクティスの1つとして標準機能に取り込んでいくのが普通です。しかし先ほどお話した「締め請求」などは、明らかに非効率でERPの最大の特徴であるリアルタイム性を損なってしまう商習慣のため、なかなか標準機能に取り入れられづらいという背景もあるのではないかと思います。

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