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なぜ、すき家は“ディストピア容器”を提供するのか 「並盛430円」のスゴさが見えてきた

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月17日 6時0分

なぜ、すき家は“ディストピア容器”を提供するのか 「並盛430円」のスゴさが見えてきた

すき家の「ディストピア容器」が話題に

 「温かみがない」「餌を出されているよう」「これってエコじゃないのでは?」――そんな感じで、すき家の“ディストピア容器”がディスられている。

 ご存じない方のために説明をすると、ディストピア容器とは、すき家の一部店舗でちょっと前から食事の提供時に使用されているプラ容器や発泡スチロール容器、紙皿などの「使い捨て容器」のことだ。従業員の作業負担軽減のためとのことだが、これに一部の客が文句を言って、SNSで「ディストピア」(反理想郷、ユートピアの逆)などと揶揄(やゆ)されたことから、ディストピア容器という言葉が生まれたのである。

 個人的には言い得て妙だなと感心する一方で、こういう「安さ」を売りにしている外食企業の取り組みにいちいちディストピアとかなんだとかケチを付ける風潮こそが、日本を「安くて貧しいディストピア」にした元凶のような気もしている。

 ここまで日本が貧しくなってしまったのは、人口減少で日本のGDPの約7割を占める「内需」が盛り上がらないからだ。これは消費税をゼロにしても解決しない。年収5000万円の富裕層からすればお得な話なので特定の市場は潤うが、年収300万程度の低所得者層はもともと消費が少ないので「コロナ禍のバラマキ」と同じでほとんど意味はない。おかずが一品増えるか、預貯金が増えるだけだ。

 では、どうすれば解決するのかというと、「稼ぎ」を増やしていくしかない。つまり、賃上げである。2022年時点でOECDの主要先進国中、日本の賃金は最も低く、ドイツやカナダの7割弱、米国の約半分という水準だ。OECDの平均値を下回るだけでなく、イタリアや韓国の水準も下回る。

●低賃金と日本特有の風潮の関係

 なぜこんなに日本だけ賃金が低いのかというと、実は日本人の7割が働き、日本のGDPの7割を占めている「サービス産業」に対して、異常なほど「安さ」の圧力が強いからだ。ここに筆者は「ディストピア容器」をディスる日本特有の風潮も関係していると思っている。

 単刀直入に言わせていただくと、「安い店で大したカネも払わないくせに高品質・高サービスは過剰に求める」というモンスター客が異様に多いのだ。そのため「安くて高品質」を実現するためどうしても、現場の労働者が「低賃金で重労働」を強いられてしまうのである。

 そう聞くと、「消費者が品質やサービスを求めるのは当たり前だ」というお叱りが飛んできそうだが、筆者は「それがいかん」と言っているわけではない。そこまで品質やサービスを求めるのなら、客側もそれなりの対価を払わなくてはいけない。そこで「安さ」まで求めるのは、店側に労働者を犠牲にした消耗戦を強いることになる。それが全国津々浦々で日本経済を冷え込ませている、と申し上げたいのだ。

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