「トヨタが日本を見捨てたら、日本人はもっと貧しくなる」説は本当か
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月24日 6時20分
そしてその350万社のほとんどが、従業員が5人から20人という「小規模事業者」である。これはトヨタの下請けでもなければ大企業と取引もしていない、個人商店や家族経営といった零細企業であることも分かっている。
●日本人が「低賃金労働者」から抜け出せない理由
つまり、日本人が貧しさに歯止めがかからないのは、「サービス業の小さな会社で働く日本人」という圧倒的な多数派が「低賃金労働者」から抜け出せないことが大きいのだ。
だから、トヨタが5兆円の営業利益を出そうとも、過去最高の賃上げをしようとも「日本人の貧しさ」は特に変わらない。トヨタなんて大したことがないとかディスっているわけではなく、産業構造的にも労働者の比率的にも影響が小さいと申し上げているのだ。
このような話をすると、「トヨタのような巨大企業が元気になれば下請けや関連企業も元気になって、そこで働いている膨大な数の従業員が金をじゃんじゃん使って日本全体の景気が良くなるんだよ、そんなことも分からないのか?」などとお叱りを受けることが多い。
ただ、筆者としては、そういう「風が吹けば桶屋がもうかる」的なザックリとした経済観こそが日本を貧しくさせた「元凶」だと思っている。今回あえて指摘をさせていただいたのも、それを問題提起したいからだ。
今、社会で働く人の多くは子ども時代、学校教育で「戦後の焼け野原から世界第2位の経済大国になれたのはトヨタやホンダやソニーなど技術力のある企業がどんどん成長して、世界的大企業になったからです」と教えられてきた。
ただ、これは典型的な「日本人の好みに後付けしたサクセスストーリー」だ。
「1人当たりGDP」がある程度同じくらいの水準になった先進国同士の経済は、人口に比例する。日本が世界第2位の経済大国になったタイミングは、日本の人口がドイツの人口を追い抜いて、先進国で第2位になったからだ。
今、世界第2位の経済大国は中国だが、これについて「BYDやファーウェイの技術力が日本やドイツの技術力を抜いて世界的大企業になったから」なんて解説している専門家はほとんどいないだろう。中国は途上国ながら、「1人当たりGDP」もそれなりに高くなったことで、14億人という人口が追い風になっている。
●日本経済の「失敗の本質」
ただ、こういう教育の効果は絶大で「三つ子の魂百まで」ではないが、日本人の多くは大人になってからも「日本経済をけん引しているのは大企業、だからとにかく大企業を応援しなくては」という「大企業中心主義」ともいう経済観に支配されている。
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