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「トヨタが日本を見捨てたら、日本人はもっと貧しくなる」説は本当か

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月24日 6時20分

 これが日本経済の「失敗の本質」である。

 先ほどから繰り返しているように、日本の貧しさの元凶は、サービス業の小さな会社で働く日本人が常軌を逸した低賃金だからだ。

 なので、日本経済復活のためには全国民の7割が働く350万社の小さな会社の賃上げをしなくてはいけない。ただ、これが難しい。小さな会社は常に資金繰りに困っていることに加えて、事業資金とオーナ経営者のサイフが同じであることが多い。つまり、政府が税金を用いて、小さな会社に「賃上げをしてね」と補助金をバラまいたところで、運転資金にまわされるか、経営者の懐に入るだけで、末端の労働者に還元されない。

 そうなると残された道は、最低賃金の引き上げしかない。経営者にピンハネをされないように、日本全国あらゆる産業が平等に賃金のボトムアップをしていくことで、賃上げの好循環を生み出すのである。実際、先進国の多くはこのような手法をとっている。

 しかし、大企業中心主義の日本ではそういう発想にはならない。「春闘」でトヨタやらの大企業が賃上げをしていけば、トリクルダウンで日本全体に賃上げの波が広がっていく、という「風が吹けば桶屋がもうかる」的な経済政策を何十年も続けてきた。

 ただ、結果はご存じの通りだ。毎年、アナリストの皆さんが「今年の春闘の賃上げの影響は夏くらいから見えてくるでしょう」と予想するも、日本人の7割は低賃金のままということが延々と繰り返されている。大企業の好業績や賃上げと、庶民の貧しさのギャップがどんどん開いているのだ。

●日本人の所得をボトムアップするには

 冷静に考えれば当たり前だ。1万社程度の大企業の賃上げが、350万社の中小企業に波及するわけがない。しかも今、国内で労働組合は2万程度しかない。その全てが労使交渉で過去最高の賃上げを成し遂げたところで、日本企業の圧倒的多数派である従業員数5~20人程度の「小規模事業者」への影響はほぼゼロだ。

 それくらいの規模の会社は労組もないし、オーナー社長が「ごめん、今年はきついからボーナスなしね」なんて感じで、自分のさじ加減で給料を決めているからだ。

 このような現実とデータを直視すれば、「日本企業の99.7%、350万社を対象に賃上げと価格転嫁を促すため、全国一律で最低賃金を引き上げていく」という政策のほうが、はるかに現実的だし「平等」ではないか。

 しかし、そうはならない。政府もアナリストも専門家もマスコミもあくまで「大企業」にこだわる。トヨタが世界を制すれば、日の丸半導体が過去の栄光を取り戻せば、その勢いで日本経済も復活して、景気も良くなって自然に日本人労働者の賃金も上がっていく、という東京五輪や大阪万博を開催して日本が元気だった時代の成功シナリオをどうにか「再現」しようと必死なのだ。

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