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日本一短い航空路線が廃止 「たった10分」のフライトがもたらしてきたもの

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月30日 6時20分

●最短フライトならではの大変さも

 那覇空港に着くと、すぐさまRACのオフィスへ。同社乗員部 客室乗員室主任の天河千晶さんにインタビュー取材をするためだ。

 天河さんは2010年1月入社して以来、一貫して客室乗務を担当。数年前には教官として後進指導の役割も担っていた。南大東~北大東には累計260回以上は乗務しているという。

 まず尋ねたのは同路線での業務内容。最短フライトだからといって特別な仕事が発生するわけではないが、他路線との違いとしては、シートベルトのサインが出発から到着まで点灯したままであることや、飲み物のサービス提供がないこと。三角運航路線は客室乗務員一人による“ワンオペ”だったが、これはRACの全路線に該当する。「日ごろから慣れていて問題ない」と天河さん。

 だからといって、南大東~北大東は業務負担が少なく楽なのかといえば、決してそうではない。離陸から着陸まで約10分間しかないため、息つく暇はなく、逆に慌ただしくしているそうだ。

 この路線に初めて乗る客の反応で多いのは、「離陸後10分で着きます」とアナウンスすると、笑いや驚きの声が起こること。確かにここでしか聞けないアナウンスだろう。ただし、天候不良などには20~30分かかることもある。その時は「今日はちょっと遠いなと感じますね」と天河さんは述べる。

●島の子どもたちの人生を見守る

 長年この路線に乗務してきた天河さんの一番の思い出は、島の子どもたちとの絆(きずな)が生まれたことである。

 「大東路線は家族連れでご利用される島の方がたくさんいます。そうした中で妊婦さんに出会うことも多いです」

 南大東島、北大東島ともに産婦人科クリニックはなく、出産は那覇市など沖縄本島の病院へ行かねばならない。そのため出産前の定期検診から何度も通う女性も少なくない。

 「妊娠されている時に初めて会い、その次は『産みに行ってきます』と那覇へ向かうタイミング。そして次は赤ちゃんと一緒に帰ってくる際に立ち会って。そうした出来事は定期的にありましたね」

 それだけでは終わらない。その乳児が成長していく過程もつぶさに見ることができる。小学生になって、兄弟ができて……。そして、中学校を卒業するとほとんどの子どもは進学のために島から出ていくことになる。高校のない離島で暮らす子どもたちが旅立つ、いわゆる「15の春」である。

 RACでは毎年3月に「15の春」の門出を祝い、応援する活動をしている。天河さんもこれまでに何人もの子どもたちが島を巣立っていくのを見届けてきた。

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