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日本一短い航空路線が廃止 「たった10分」のフライトがもたらしてきたもの

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月30日 6時20分

 過去に見送ってきた子どもたちが、今では本土の大学で勉強していたり、就職していたりする話をその家族から聞くこともある。天河さんは感慨深い表情で次のように話す。

 「親戚の子どもの人生を見守っているような感覚ですね。お母さんのお腹にいる時からその子が大きくなっていくまでを見る機会が幾度もありました。これはもうRACならではですし、大東島との関わりを強く感じています」

 小さな島から少人数を運ぶ航空路線に長年乗務する、この仕事だからこその醍醐味だろう。

●島の住民は今後どうする?

 8月1日からは那覇~南大東が往復2便、那覇~北大東が往復1便の運航ダイヤに変わる。今後、南大東島と北大東島の間は船での移動のみとなる。もし飛行機で移動したいのであれば、360キロほど離れた那覇を経由して隣の島に渡るわけだが、どう考えても現実的な選択ではないだろう。このたびの路線廃止について南大東島の住民数人に聞いたところ、さほど影響はない様子だった。

 これまで飛行機を使うことはあっても、その最終目的地は那覇なので、もう一方の島に渡るだけのためには利用しない。島間の往来についても、日ごろから知り合いの漁船に乗せてもらう人が多いという。なお、船だと1時間程度である。

 RACにも確認すると、既に述べたように、もともと南北の島の行き来を主目的にした観光客は少なく、両島間を定常的に運搬するような貨物もそれほど多くはなかった。

 逆に、従来の三角運航によって不便さを感じていた乗客もいた。例えば、木曜に北大東で仕事をする際に、那覇→南大東→北大東と飛び、そこで一泊する。すると、翌日は航路が逆回りになってしまうことで、北大東→南大東→那覇のルートで帰らなければならない。

 繰り返しになるが、この三角運航路線自体はビジネスユースが大多数を占めるため、コロナ禍でも高い搭乗率を維持し、採算もそれなりに取れている路線だった。今回の廃止は経済的な理由ではなく、乗客の効率性を高めることが主目的となるだろう。

 最後に、天河さん自身の南大東~北大東路線に対する思い入れを問うと、「私の誇りでした」と明かしてくれた。

 「今ではこのフライトに慣れてしまっているけれど、例えば、私が県外に行って飛行機に乗ると、あらためてこの短い時間は本当に特別なんだなと実感します。とても誇りに思っていますし、今後は『◯◯分です』というフライトタイムが言えなくなるのは寂しいです」

 長きにわたり乗務した路線廃止への悲しみはあるが、RACには他にも短距離路線が存在する。宮古~多良間の63キロ、約15分のフライトだ。これからはここを新たなプライドにしていきたいと天河さんはほほえむ。

 なお、国内全体では、日本エアコミューター(JAC)が運航する奄美~喜界の約26キロが8月以降は日本一短い航空路線になる。

●著者プロフィール

伏見学(ふしみ まなぶ)

フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。

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