なぜ、パーパス設計は失敗するのか? 経営理論に学ぶ「4つのフェーズ」
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月10日 7時15分
パーパス・ディープニングの概要
前回の記事では、企業がこれからの時代に生き残るために、強い“宗教”が必要であること、パーパスがそのための”教義”となることを、スターバックスの事例を通して解説しました。
そして同時に、パーパスを掲げるだけでは問題は解決せず、ほとんどの企業が失敗パターンに陥っていることも指摘しました。
パーパスを設計する段階で陥りやすい失敗とは何か。機能するパーパスをつくるために、そしてつくったパーパスを組織にインストールするためにどうすればいいのか?
今回は、筆者が経営理論の研究から開発した、企業の”宗教”をつくるフレームワーク「パーパス・ディープニング」についてお話しします。
●パーパスを組織に落とし込む 世界の経営理論に学ぶ
まずは、フレームワークのベースとなっている「SECI(セキ)モデル」に関して説明しましょう。SECIモデルは、一橋大学名誉教授・野中郁次郎氏による経営理論で、「知の創造」、つまり組織がどうやって新たな知を生み出すのかというメカニズムを解明したものです。
理論の前提となるのは、組織の中にある「形式知」と「暗黙知」です。形式知とは、言葉や図で表現でき、人に伝えることが可能な知識のこと。企業でいえば、業務マニュアルや営業スクリプトなどがこれに当たるでしょう。それに対して、暗黙知とは、経験に基づく主観的・身体的な知識のこと。例えば、熟達した職人のノウハウや、経験豊富な経営者の勘が一例です。
SECIモデルは「個人の中に眠る暗黙知を組織全体に広げ、また新たな暗黙知が生まれる土台をつくる」という知の創造のダイナミックなサイクルを4つのステップで描いています(図1)。
・ステップ1:個人の中にある暗黙知を、経験や対話を通じて共有する(共同化)
・ステップ2:暗黙知を、言語化などを通じて形式知にする(表出化)
・ステップ3:できた形式知を個人が持つ既存の形式知と組み合わせる(連結化)
・ステップ4:新たな形式知を、行動による反復学習で組織全体の暗黙知にする(内面化)
このサイクルを回すことで、組織は新たな暗黙知と形式知を獲得し、知識を増大させていくのです。
パーパス・ディープニングは、このSECIモデルをパーパスの開発・実装に応用したもの。経営者の暗黙知をパーパスとして教義化し、そのパーパスを組織のカルチャーになるまで浸透させるためのフレームです。概要を図にまとめました(図2)。
パーパス・ディープニングもSECIモデルに対応する4つのステップで構成されており、大きくは「教義化フェーズ」「カルチャー化フェーズ」の2つに分かれています。それぞれのフェーズを具体的に見ていきましょう。
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