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なぜ、パーパス設計は失敗するのか? 経営理論に学ぶ「4つのフェーズ」

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月10日 7時15分

教義化フェーズ

・ステップ1:経営者の暗黙知を対話によって引き出す

・ステップ2:暗黙知をパーパスとして言語化する

 ステップ1で重要になるのが、経営者と対話する側の「教養力」です。パーパスとは「世界にとってその企業の存在意義とは?」を定義するものであるため、当該企業のビジネス理解はもちろん、他業種の知識や、社会の大きな流れへの洞察、場合によっては文化や哲学、倫理など、あらゆる視点から経営者の思考を浮かび上がらせることが必要になります。

 SECIモデルにおいても、暗黙知を形式知にするには「比喩」「類推」「仮説化」が効果的であることが指摘されています。まだ言語化されていない概念を引き出すために、他分野の事例や構造を用いることが有効になるのです。

 ステップ2で重要なのが、パーパスを周囲に伝播させる「言語化力」です。概念自体がすばらしいものであったとしても、他者の理解や共感を生む言葉になっていなければ意味がありません。優れたキャッチコピーが人の心を動かすように、パーパスもその伝わり方にまで気を配ることが大切なのです。

 「パーパスを掲げることに失敗している企業がほとんど」と前回も書きましたが、大半がこの教義化フェーズでつまずいています。よくある失敗パターンを3つ挙げましょう。

 まず1つめが、対話のレベルが浅く、暗黙知を引き出しきれないパターン。自社のビジネスや競合環境に終始してしまい、社会的な視点が抜け落ちることで、パーパスが企業の存在意義と呼べる視座にまで達しないことがあります。スターバックスの「サードプレイス」は、”コーヒー”という事業を超えて”人の居場所”という社会性に踏み込んでいるからこそ共感を呼ぶのです。

 2つめが、関係者の意見を聞き過ぎて漠然とした概念になるパターン。大企業に多いのですが、さまざまな人々のネガティブチェックを経た結果、当たり障りのないことしか訴求できなくなることがしばしばあります。よく見かける「あなたと地球の未来をつくる」のようなどこの企業でも言えるパーパスは、この結果であることが多いです。

 そして3つめが、言語化がうまくいっていないパターン。例えば同じ内容を訴求するにも「次世代のイノベーションを起こす」と「明日の常識をつくる」では伝わり方が異なります。前者のような陳腐化された言い回しではなく、人々の記憶に残り共感を生むような”How”の追求も忘れてはなりません。

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