「辞めた会社に戻りたい」――増える“元サヤ転職”、その魅力と難しさ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月12日 7時45分
前例のないプロジェクトにアサインした好事例も(画像提供:ゲッティイメージズ)
今回は「出戻り転職」をテーマにあれこれ考えます。
まずは、就職情報サイトのマイナビが実施した調査結果を紹介します。転職経験者の3人に1人にあたる32.9%が「過去退職した会社に戻りたいと思ったことがある」と回答しました。理由として多かったのは「育児などの家庭の事情で転職したが、環境が変わった」「退職前に気が付かなかった良い面に気付いた」などで、転職経験者のうち57.5%が退職した会社の人と「連絡を取っている」と答えたそうです。
出戻り転職、アルムナイ採用、ジョブリターン、キャリアリターン、カムバック制度、退職後再雇用。呼び名はさまざまですが、人手不足解消の手段の一つとして大きく注目されているのが、自己退職した従業員を本人の希望で復帰させる“元鞘雇用”(私はこう呼んでいます)です。
●楽天、キリン、日本郵政も導入――なぜ今“元鞘雇用”なのか?
楽天、キリンビール、リクルート、日本郵政グループでは、数年前からその制度を取り入れています。また、7月末には三菱UFJが来年度から「原則書類選考なし、年齢制限なし、再入行時の職種の選択あり」というかなり魅力的な条件で、“元鞘雇用”に踏み切ると発表しました。
元鞘雇用――良いです。とても良い取り組みだと、率直に思います。
なにせバブルが崩壊した1990年代以降、日本企業が進めてきたのは「人間の顔」をみない経営と、働かせ方です。
1999年5月、トヨタの奥田碩社長が日経連の会長に就任し「人間の顔をした市場経済」と「多様な選択肢をもった経済・社会」を活動の理念に掲げ、「解雇は企業家にとって最悪の選択。株価のために雇用を犠牲にしてはならない」と企業の安易なリストラに警鐘を鳴らしました。
しかし、2000年代に入っても企業は「人間の顔」を見ようとしなかった。安い労働力を増やすことで生産性を向上させ、「人の可能性を信じる経営」を置き去りにしてきました。
社員が積み上げた“経験”は、我が社にとって大切なリソースなのに「経験? そんなもの、使いものならん」と50歳になった途端、一斉に在庫一掃セールにかけ「経験より若手でしょ!」と若手至上主義を強めてきました。
人によって経験は違うのですから、唯一無二の経験=暗黙知を結集させることが、創造力の土台になるのにそれを蔑ろにし、さらには、育児経験、留学経験を嫌いました。多様性の視点からも働く人それぞれの「仕事内外の経験や役割の蓄積」というリソースは、企業にとって大きなメリットをもたらすのに。灯台下暗しというか、傍目八目といいますか。
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