イオンが手掛けた“謎の百貨店”「ボンベルタ」 密かに姿を消した理由とは?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月20日 7時20分
31年の歴史に幕をおろしたボンベルタ成田(撮影:淡川雄太)
日本各地で地域のシンボル的存在だった百貨店の閉店倒産廃業が相次いでいる。
2024年1月には島根県唯一の百貨店「一畑百貨店」が廃業、5月には鹿児島県唯一の百貨店「山形屋」が事業再生ADRによる私的整理を開始、7月には岐阜県唯一の百貨店「岐阜高島屋」が閉店した。百貨店の支援や跡地活用に向けた取り組みは、これらの地域にとって喫緊の課題となっている。
そのような状況下、千葉県成田市の百貨店「ボンベルタ」がひっそりと姿を消した。
日本を代表する流通大手、イオングループが手掛けるものの、全国的知名度は皆無。千葉県民でも知る人ぞ知る存在だった百貨店は、イオンの今後の戦略に新たな道を示していくこととなる。前編、後編の2回にわたって紹介する。
●“謎の百貨店”ボンベルタ、なぜ生まれた?
イオンの前身「ジャスコ」を始めとする総合スーパーは、高度経済成長や大量生産・大量消費社会を追い風に業界内での影響力を向上。1972年にダイエーが三越を抜き小売業界首位となるなど、百貨店に代わり「小売の王様」としての地位を確立しつつあった。
一方、総合スーパー各社は競合他社との同質化、地方展開に課題を抱えており「何でもあるが欲しいものはない」と評する客も当時からみられていた。
小売業界首位となったダイエーは外資系百貨店「プランタン」を設立。大手百貨店「高島屋」や経営基盤の脆弱な地場百貨店各社への出資を通し接近することで、消費者ニーズの多様化・高度化といった課題の解決を試みるが、ジャスコも同様の取り組みを打ち出していた。
ジャスコは1969年2月に西日本地場大手スーパー3社の共同仕入機構として設立した経緯もあり、1976年8月の千葉地場老舗百貨店「扇屋」との経営統合、1977年8月の茨城地場老舗百貨店「伊勢甚」との経営統合まで首都圏での影響力は乏しかった。
扇屋・伊勢甚はともに、三越や松坂屋といった大手百貨店各社と仕入調達や販促面で業務提携を結びつつ、総合スーパーや飲食サービス、金融業など関連領域に業容拡大を図るなど、地域の代表企業として存在感を示しており、ジャスコの首都圏での店舗展開の足掛かりとしての役割を担った。
一方、ジャスコの業界内での規模は同業大手と比べ依然として下位にあり、再開発ビルの商業核といった「一流の地」でなく、「二流の地」しか店を構えることができない要因となった。
(関連記事:「二流の地」から「流通の覇者」へ イオンが成功した出店戦略とは)
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