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“リースの資産計上”義務化で「企業の負債が大幅増加」──他にどんな影響が?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月2日 6時15分

 というのも、会計基準の変更というものは企業の実態そのものに変化をもたらすものではない。多くの金融機関や市場参加者は、すでにこれらの業界でリース取引が行われていることを認識しており、基準変更による一時的な財務指標の変動は長期的な企業価値には大きな影響を与えないと見られている。

 ちなみに2019年に、国際会計基準を採用している企業については先んじてリース契約をリース取引と見なし、財務指標上の負債計上が義務化された経緯がある。当時も財務諸表の安価から株価の急落などを悪影響を懸念する声が増加した。

 しかし、そこから5年が経過したものの、国際会計基準導入企業において、19年の基準見直しは企業の信用格付けや中長期的な株価に大きな悪影響を与えなかった。企業経営の実態が変わらない限り、会計処理の変更による一時的な負債増加は、市場によって適切に評価されるのだ。

●リース取引との付き合い方は変わる?

 リースを活用した資金調達スキームの一つに、セールアンドリースバック取引というものがある。これは、企業が自社の資産を売却し、その後に同じ資産をリースする取引である。この手法は、資金調達手段として長く利用されてきたが、今回のリース会計基準の変更により、その有効性が低下する可能性については気を付けておきたい。

 セールアンドリースバック取引は一般にオペレーティングリースとして扱われるケースが大多数であり、これまではオフバランスシート取引として企業の財務諸表には反映されなかった。しかし、新基準ではこの取引も貸借対照表に計上されるため、資産を売却してもリース分の負債が残ることになる。

 セールアンドリースバック取引は、一般に自社の資産を売ってから借りて利用するものであるため、長期のリース取引になりやすい。そうなると、負債計上によって金融機関からの融資の際に、その分だけ融資額が差し引かれたり、M&Aの場面で若干不利な値付けをされたりするリスクはある。

 ただし、眠っている自社資産を流動化し、成長に向けて新たな投資を優先させたい企業や、リースバックする資産の利用が比較的短期で終了するケースの場合は、そのようなリスクと比較して資金調達メリットの方が高いといえる。依然としてセールアンドリースバックが資金調達手段として有効な場合もあるため、リース取引との付き合い方は個々のケースごとに判断したい。

●資産の購入も視野に入れた戦略を

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