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小田急「ロマンスカー新型車両」が登場へ これまでの“常識”を飛び越えられるか

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月14日 9時10分

 2001年にJR東日本が湘南新宿ラインの運行を始めると、新宿~小田原間に「JRのグリーン車」という選択肢が生まれた。いままで新宿でロマンスカーに乗り換えてくれた客を奪われる形になった。この対抗策として、小田急電鉄は2008年に地下鉄対応で編成分割も可能な青いロマンスカー60000形「MSE」を投入する。相互直通運転を実施している東京メトロ千代田線に乗り入れ、「メトロはこね」「メトロえのしま」を運行している。

 一方で、ロマンスカーには新たな問題が発生した。製造から20年を経過した10000形「HiSE」を使い続けられなくなった。リニューアル工事を実施すれば、あと10年は使えるはずだった。しかし2000年にバリアフリー法が制定された。鉄道車両を新造、あるいは大規模な改造をする場合は座席を一定の比率で車椅子に対応させる必要がある。ハイデッカータイプの「HiSE」では対応が不可能だった。

 ロマンスカーの人気を維持するためにも、展望席付き編成の数を維持する必要がある。しかし「HiSE」は使えない。そこで作られたロマンスカーが50000形だった。「白いロマンスカー」は、展望席車両の再来として話題になった。ところが、この「白いロマンスカー」も誕生から19年という短命で引退する。延命するため老朽化を補うリニューアル工事をしたいところだけれども、アルミ製車体は鋼製車体に比べて加工しにくい。連接車体という特殊構造のため故障時の機器交換に手間を要したからだ。

 2028年に登場予定の新しいロマンスカーは、この「白いロマンスカー」の「後継」とされている。箱根行き観光需要の維持という点で、展望席は必須だろう。

●“仮称”80000形への期待

 2018年にオレンジ色のロマンスカー70000形「GSE」が誕生し、展望席付きロマンスカーは「VSE」と合わせて4編成になった。ところが「VSE」は2023年に引退したため、現在の展望席付きロマンスカーは「GSE」の2編成のみとなった。いまや箱根特急のほとんどが「EXE」になってしまった。ロマンスカーのアイデンティティーの喪失だ。編成数維持の面からも、2028年に登場する新型ロマンスカーは展望席必須といえる。

 しかし、“50000形「EXE」の代替”という言葉も気になる。「EXE」の特徴は編成分割だ。展望席付き編成分割対応の姿は、地下鉄対応で編成分割可能なロマンスカー60000形「MSE」の先頭車を展望席付きにするイメージだろうか。いまや「MSE」も5編成あり、箱根行き特急にも使われている。その便利さを引き継ぐ必要はあるだろうか。

 おそらく「80000形」という形式名が与えられる新型ロマンスカーの役割は、再び失われそうなロマンスカーの魅力回復にある。展望席は必須だけれども、それが先頭車になるか、あるいは20000形「RSE」のような2階建て車両になるか。2階建てなら分割編成にも対応できる。

 あるいは東武鉄道の「スペーシアX」のような個室中心の豪華タイプになるかもしれない。東京近郊観光地として、箱根と日光はライバルだ。東武鉄道は編成分割対応の「リバティ」と非分割個室付き「スペーシア」「スペーシアX」の2系統で運用していて、これは小田急電鉄の「EXE」と「GSE」の関係に似ている。

 80000形(仮称)は、箱根の魅力を最大限に引き出すために「ロマンスカーX」になる必要がある。いままでのロマンスカーの「常識」を飛び越えてほしい。

(杉山淳一)

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