給料が上がらなくても「社員旅行」を復活すべき、その意外な経済効果
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月25日 9時46分
なぜ「社員旅行」は復活すべきなのか
パワハラ、セクハラ、過重労働、飲みニケーション……そんな昭和の企業文化がまた一つ消えていくことになりそうだ。
先日、『AERA dot.』が「『社員旅行』はオワコンなのか? 行きたくなかった若者も満足させた『令和の社員旅行』の最前線」(2024年9月23日)という記事で、「参加自由」「エンタメ性」などユニークな社員旅行を実施している企業の取り組みを紹介していたが、そこで社員旅行そのものに対してネガティブな意見が多く寄せられていたのである。
「そりゃ、観光地に遊びに行けば会社のメンツと一緒でもそれなりに楽しいだろうけど、社員旅行をする余裕があるのなら、社員の給料や待遇の改善に回すべきではないか」
「旅行して社員同士の距離が縮まるって言うけど、わざわざ旅行しないと上司に思ったことが言えない、部署内でコミュニケーションが取れないという職場環境に問題があるんじゃないの?」
このような意見が多いのも致し方ない部分はある。『日本経済新聞』が財務省発表の法人企業統計を基に算出したデータによると、2023年度の日本企業の労働分配率は38.1%と過去最低だった。
一方で企業内に蓄積されている内部留保は過去最高だ。若者の貧困や少子化の一因もこの常軌を逸した低賃金にある。つまり、日本の企業労働者たちは「社員旅行のおかげで社長と距離が縮まったなあ」なんて呑気なことを言っている場合ではなく、経営者に対して「物価上昇に伴う賃上げ」をゴリゴリ求めていかなければいけないのだ。
ただ、その一方で社員旅行という企業文化がこのまま消えてしまうのは惜しい。むしろ日本経済全体を考えた場合、積極的に活用すべきだと思っている。
●“国内”で社員旅行すべき理由
といっても、それは「社員旅行で愛社精神アップで業績もアップ!」とか「エンゲージメントが向上して離職率が下がる」みたいな方向の話ではなく、「経済効果」が期待できるからだ。
「社員旅行ごときでそんなに経済効果なんてないだろ」と冷笑する人もいるだろうが、バブル期まで全国にあった「大型観光ホテル」は紛れもなく「社員旅行効果」である。大量の団体ツアー客が毎年必ずやってきてくれるので、観光業者側も安心して設備投資を行えたのだ。
これを令和の今、復活させる。現在、企業の2割ほどしか実施していない社員旅行を、かつてのように「8割」くらいに戻して、民間企業にカネを使ってもらう。もっとストレートに言ってしまうと、社員旅行の名目で企業がため込んでいる内部留保を吐き出させるのだ。
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